【とっておきシネマ】 日本映画『凪待ち』
サウンドブランチ 鳥飼美紀です。
今週は、香取慎吾さん主演の『凪待ち』をご紹介しました。
恋人の亜弓、その娘・美波と三人で暮らす郁男。
ギャンブル好きで、毎日をふらふらと無為に過ごす自分に、亜弓と結婚する資格はないと思っていた。
そんな時、亜弓の父親の末期がんをきっかけに、三人は亜弓の故郷・石巻に引越しすることになる。
気難しい亜弓の父親・勝美や面倒見のいい隣人・小野寺らと接しながら、郁男はその場所で再出発しようとする。
ところが、ある日、母親の亜弓と衝突した美波が家を飛び出す。
それがきっかけで、取り返しのつかないことが起きてしまい、郁男の生活は荒れ狂う波に翻弄されていく。
これから先、彼の人生に穏やかな凪の時期はやってくるのだろうか……。
『孤狼の血』『凶悪』など、常にハードな話題作を発表してきた白石和彌監督の最新作です。
何をやってもうまくいかず、常にトラブルを抱え、どうしようもない人生を生きる男。
決して悪い人間ではない、ただ“弱い”だけなのかもしれない。
そんな自分を最も嫌悪しているのは自分自身なのに、なぜか踏ん張ることができない。
心の中で、もがきながら生きていく郁男を、香取慎吾が時に淡々と、時に激しく演じているのが新鮮です。
さらに、脇を彩る俳優陣の演技が素晴らしい!
粒ぞろいの確かな演技力だからこそ、作品に重みとリアリティが生まれます。
特に、亜弓の父親・勝美役の吉澤健! まったく気難しい漁師そのもの!
この吉澤健や麿赤児、不破万作という状況劇場出身の濃厚な俳優と、メジャーなアイドルだった香取慎吾との共演は監督のコアな狙いだったとか。
そして、リリー・フランキーの演じる小野寺の“寛容と優しさ”に、私は涙しました。
もし私が自暴自棄になった時、こんな人が傍にいてくれたなら……あるいは、こんなふうに他人に寄り添える人間になれたなら……そう思いながら。
それなのに……。
監督:白石和彌
出演:香取慎吾 恒松祐里 西田尚美 吉澤健 音尾琢真 リリー・フランキー
http://nagimachi.com/
2019年 日本 124分 配給:キノフィルムズ
TOHOシネマズ梅田 TOHOシネマズ西宮OS などで6月28日(金)から公開