【とっておきシネマ】「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」
サウンドブランチ 鳥飼美紀です。
今週のとっておきシネマは、いまや名バイプレーヤーとして大活躍中の俳優・松重豊さん初の主演映画!
しかも、男性の不妊治療にチャレンジするアラフィフ作家という興味深い役どころです。
松重さんならではの“肩の力の抜けた”演技が、デリケートなテーマをポジティブに仕上げてくれています。
ヒキタクニオは49歳の流行作家。
サウナとビールが大好きで、ジム通いのおかげでいたって健康体。
妻のサチとは一回り以上も年が離れているが、初婚である。
ふたりは、子どもは作らず、気ままに楽しい夫婦生活を送るつもりでいたが、ある日、妻の突然の一言ですべてが変わる。
「ヒキタさんの子どもに会いたい」
子どもが欲しくなったというサチの気持ちに応えるべくヒキタは妊活に同意するが、1年が過ぎても妊娠の兆候はない。
彼は知らなかった……若くて健康だと思っていたが、体内で確実に老化現象を起こしているものがあることを。
「ヒキタさん、大変なことになってるよ」
検査結果を伝える医師の第一声。
さぁ、何が大変なことになっているのか。
その一言を聞いた日からヒキタ夫妻の悪戦苦闘、涙ぐましい努力の日々が始まる。
原作は、作家のヒキタクニオさん自身の実体験を綴ったエッセイ『ヒキタさん! ご懐妊ですよ 男45歳不妊治療はじめました』(光文社新書)。
不妊治療というデリケートなテーマの作品ですが、とても温かな視点で描かれています。
コミカルではありますがドタバタではなく、深刻でありながら暗くもなく、主人公のヒキタさんが飄々としていて、けっこうポジティブ。
彼は、自分が原因で子どもができないということに卑屈にならず、とにかく頑張る姿勢が最高にカッコイイ!。
そんなヒキタさんと同じ病院で不妊治療中の男性がつぶやいた言葉が印象的です。
『公平っちゃないですよね。どんな年齢・仕事でも、頑張っても頑張らなくても、欲しくても欲しくなくても、できる人にはできる、できない人にはできない』
これは真実を突いています!
映画の中で、濱田岳さん演じるヒキタさん担当編集者の杉浦がそれを証明してくれています。
実は、私も結婚してウン十年になりますが、子どもは授かりませんでした。
初歩的な妊活はしましたが、早々に諦めて、夫婦ふたりの人生を楽しむことに決めました。
子どもがいてもいなくても、人生は自分たち次第でどーにでもなりますから!
年の差カップル、不妊カップル、子だくさんカップル…色々なご夫婦に観ていただきたい作品です。
監督・脚本:細川徹
原作:ヒキタクニオ『ヒキタさん! ご懐妊ですよ』(光文社刊)
出演:松重豊 北川景子 山中崇 濱田岳 伊東四朗
2019年 日本 102分 配給:東急レクリエーション
https://hikitasan-gokainin.com/
現在、イオンシネマ三田WT 神戸国際松竹などで大ヒット上映中です。