【とっておきシネマ】ベトナム映画『第三夫人と髪飾り』

サウンドブランチ 鳥飼美紀です。
今週は、大人の映画『第三夫人と髪飾り』をご紹介しました。
新鋭アッシュ・メイフェア監督のデビュー作で、世界各地の映画祭で数々の賞を受賞した、とても美しい映画です。

©copyright Mayfair Pictures.

舞台は19世紀の北ベトナム。
美しい渓谷に囲まれた絹の里の富豪の第三夫人として、14歳のメイが嫁いでくる。
富豪の邸には、一人息子を産んだ第一夫人のハ、3人の娘を産んだ第二夫人のスアンが暮らしていた。
メイは、さらなる男子の誕生を期待され、第三夫人として迎えられたのだ。
二人の夫人に見守られながら穏やかな毎日を送っていたメイだったが、いつしか男子を産むことにとらわれ始める。
やがてメイは妊娠するが、同時に第一夫人も妊娠し、さらにメイは第二夫人のある秘密を知ってしまう……。

©copyright Mayfair Pictures.

ベトナム映画といえば、1993年の『青いパパイヤの香り』がすぐに思い出されます。
無駄な言葉をそぎ落とし、美しく静かな映像で観る者を魅了する……絵画のような映画でした。
その『青い…』のトラン・アン・ユン監督がこの作品の美術監修を務め、さらに主人公ムイを演じたトラン・ヌー・イエン・ケーが第一夫人の役で出演しています。
そんなことから、二つの作品をまるで姉妹のように感じるのは私だけではないと思います。

©copyright Mayfair Pictures.

色鮮やかな数々のベトナム料理に魅せられた『青い…』でしたが、この『第三夫人と髪飾り』の魅力の一つは、比喩的に使われる自然の情景でしょうか。
この映画の舞台となるのは、断崖絶壁の山々とその麓を流れる川、神秘的な洞窟などの絶景で有名なベトナム北部・ニンピン省チャンアンという秘境。
壮大な自然、ランタンの灯や風に揺れる草花、女たちの纏うアオザイ……など、ため息が出るような美しさです。
官能的なシーンはさらけ出さず、絹を生み出す蚕や、水のしずく、草木のそよぎ、そして髪飾りなどで想像させます。
そうして、物語はひとつの邸に暮らす女たちの愛と哀しみを静かに暴いていくのです。
大人が堪能できる美しくも悲しい絵画のような映画……、是非ご覧いただきたいと思います。

©copyright Mayfair Pictures.

監督・脚本:アッシュ・メイフェア
出演:トラン・ヌー・イエン・ケー マイ・トゥー・フオン グエン・フオン・チャー・ミー
2018年 ベトナム 93分 配給:クレストインターナショナル R15+指定
http://crest-inter.co.jp/daisanfujin/
11月22日(金)からテアトル梅田、12月6日(金)からシネ・リーブル神戸で公開されます。

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