【いとしのエンタメ】映画「ユダヤ人を救った動物園~アントニーナが愛した命~」「否定と肯定」
今週の「いとしのエンタメ」は、2本の映画をご紹介しました。
どちらもナチス関連の作品です。
まずは、「ユダヤ人を救った動物園~アントニーナが愛した命~」
1939年のポーランドで、ワルシャワ動物園を営むヤンとアントニーナの夫婦。
その年の秋、ドイツがポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発。
動物園の存続も危うくなる中、爆撃やドイツ軍の命令による射殺で動物たちの命が奪われ、一方でユダヤ人の多くは次々とゲットー(ユダヤ人強制居住区)へ連行されていく。
その状況を見かねた夫のヤンは「この動物園をユダヤ人たちの隠れ家にする」という驚くべき提案をする。
人も動物も、生きとし生けるものへ深い愛情を注ぐアントニーナはすぐさまその言葉を受け入れるが…
ナチスに迫害されたユダヤ人を救った人物といえば、オスカー・シンドラーや杉原千畝などが知られていますが、このヤンとアントニーナのジャビンスカ夫妻もまた命がけでユダヤ人を救ったという実話に基づいたお話です。
主人公のアントニーナを演じるのは、この秋公開された「女神の見えざる手」でミス・スローンを演じた、ジェシカ・チャステイン。前作では、勝つためには手段を選ばず、一切の妥協を許さない鉄壁の女ロビィストを演じていましたが、この作品では一転、芯は強いがとても優しい心の持ち主を完璧に演じています。
同じ女優さんとは思えない素晴らしい演技力です。
冒頭からつらい場面が続きますが、ジャビンスカ夫妻の勇気ある偉大な行動に心打たれます。
原作:「ユダヤ人を救った動物園 ヤンとアントニーナの物語」ダイアン・アッカーマン著 青木玲訳 亜紀書房
監督:ニキ・カーロ
出演:ジェシカ・チャステイン マイケル・マケルハットン ダニエル・ブリュール
12月15日(金)から、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズ西宮OS、シネ・リーブル神戸で公開されます。
そして、「否定と肯定」、この作品の舞台は2000年のロンドンの法廷です。
1994年、アメリカの・エモリー大学でユダヤ人女性の歴史学者デボラ・E・リップシュタットの講演が行われていた。
彼女は、“ホロコースト否定論者”であるイギリスの歴史家アーヴィングが訴える「大量虐殺はなかった」とする主張を否定する立場。
講演会場にそのアーヴィングが突如乗り込み、彼女を攻め立て、その後名誉毀損で提訴という行動に出る。
訴えられた彼女のために英国人による大弁護団が組織され、アウシュビッツの現地調査に繰り出すなど、歴史の真実の追求が始まる。
そして2000年、、多くのマスコミや世界中の知識層や学者達が注目する中、王立裁判所で裁判が始まる。
ナチスによる大量虐殺はあったのか、なかったのか…歴史の真実を争う裁判の結果は?
この作品も実話で、アーヴィングが提訴したのは、英国の王立裁判所でした。英国の司法制度は、訴える側ではなく、訴えられた側に立証する責任があり、訴えられたリップシュタットは、裁判でアーヴィングが唱える“ホロコースト否定論”を崩す必要がありました。
リップシュタットは、アメリカの法廷での戦い方との違いに戸惑い、弁護団のやり方に反発しますが、裁判が進むにつれて、弁護団の戦術の深さと巧みさを知り、さらに弁護団の人柄に引き込まれていきます。フェイクニュースが取りざたされる昨今、とても興味深い作品だと思います。
監督:ミック・ジャクソン『ボディガード』
出演:レイチェル・ワイズ、トム・ウィルキンソン、ティモシー・スポール
原作:『否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる闘い』デボラ・E・ルップシュタット著(ハーパーコリンズ・ジャパン)
2016年/イギリス・アメリカ/英語/110分/原題:DENIAL/配給:ツイン
大阪ステーションシネマ、TOHOシネマズ西宮OS で12月8日(金)から上映中です。
http://hitei-koutei.com/
~サウンドブランチ 鳥飼美紀~