鳥飼美紀が、毎週金曜日夜9時からおおくりしている最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」。
今週は、今日12月4日(金)から公開の『ヒトラーに盗られたうさぎ』をご紹介しました。
【STORY】
1933年冬のベルリン。
9歳の少女アンナは、両親と兄、そして家政婦のハインピーと何不自由なく暮らしていた。
ある日かかってきた1本の電話によって、その平和な家族の風景が大きく変わっていく。
翌朝アンナは「家族でスイスに逃げる」と、母親から突然告げられる。
ユダヤ人で辛口演劇批評家の父は、新聞やラジオでヒトラーの批判をしていた。
昨日の電話は、次の選挙でヒトラーが勝ったら、ヒトラー反対者への弾圧が始まるという友人からの忠告だったのだ。
母親から、「荷物に入れるものは本2冊とおもちゃ1つ」と言われたアンナ。
大好きな“ピンクのうさぎのぬいぐるみ”や家具、ピアノ……と家の中のもの一つ一つ、そして優しいハインピーに別れを告げる……。。
【REVIEW】
ジュディス・カーという世界的絵本作家の自伝的小説を映画化した物語だ。
彼女は1923年、ドイツのベルリンで生まれ、1933年に家族と共にドイツを離れ、スイスとフランスを経由してイギリスへ亡命している。
そのナチス時代に家族が受けた迫害と逃亡の思い出を書き留めた小説が、「ヒトラーにぬすまれたももいろうさぎ」である。
2019年5月、原作者のジュディス・カーは残念ながら映画の完成前に95歳で亡くなった。
そして監督は、同じくドイツ生まれのカロリーヌ・リンク。
1995年に『ビヨンド・サイレンス』で監督デビュー。
2001年『名もなきアフリカの地で』という作品で、アカデミー外国語映画賞を受賞している。
今回の作品について「ナチスドイツから逃亡する話だが、原作は前向きに描かれていて、ほとんど陽気と言ってもいいほど」と語っている。
だから、「主人公の持つ自信と好奇心と明るさ、そして家族というものの持つ大きな力を描き、感動的であると同時に楽しい映画にしたいと思った」らしい。
確かに、どこに住もうと何があろうと、けっして“へこたれない”アンナの姿は、「可哀想」というより「楽しそう」に思える。
今年のコロナ渦のような先の見えない不安の中だからこそ、アンナのように強く生きる力を持ちたい……あらためてそう思える作品である。
余談だが、このアンナの父アルトゥアを演じているのがオリヴァー・マスッチという俳優。
彼は2015年のヒット映画『帰ってきたヒトラー』で、タイムスリップして現代にやってきたヒトラーを演じていた。
今回は逆に、そのヒトラーに対して批判的な評論家となって家族を連れて亡命する……というのも、面白いキャスティングだと思う。
原作:ジュディス・カー「ヒトラーにとられたももいろうさぎ」(評論社刊・現在は絶版)
監督:カロリーヌ・リンク
出演:リーヴァ・クリマロウスキ オリヴァー・マスッチ カーラ・ジュリ マルノス・ホーマン ウルスラ・ヴェルナー ユストゥス・フォン・ドホナーニ
2019年 ドイツ 119分 配給:彩プロ
https://pinkrabbit.ayapro.ne.jp/
12月4日(金)~シネ・リーブル梅田 12月11日~シネ・リーブル神戸 などで公開
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