金曜日夜9時からの【とっておきシネマ】、鳥飼美紀です。
三田ウッディタウンの桜が少しずつ開花し始めましたね。
武庫川沿いの桜並木も、遠くから眺めると蕾の赤い色がフワーッと広がっています。
春の陽気に、Withコロナとはいえ少し心弾んできます。
さて今週ご紹介したとっておきの映画は、『MISS ミス・フランスになりたい』。
“ミス・フランス”になりたい青年のお話。
人種・性・障害など、あらゆることに“多様性”が重要視される現代に相応しいボーダーレスな作品です。
【STORY】
パリの場末にあるボクシングジムで、雑用係として働く美しい青年アレックス。
ある日、彼の幼馴染であるボクサーのエリアスがジムにやって来る。
ボクサーになるという幼い頃からの夢を叶えた彼と再会したアレックスは、諦めていた自分の夢を思い出す。
アレックスの夢とは……ミス・フランスになること。
学校で「自分の夢」について発表した時にクラスメイトたちから「男じゃ、なれないよ」と冷やかされ、ずっと封印していた夢だった。
夢を叶えて自信にあふれているエリアスと再会して、アレックスは忘れかけていた自分の夢に向かって進むことを決意する。
それは、男性であることを隠して「ミス・フランス」コンテストに臨むという、自分自身を取り戻すための挑戦だった…。
シェハウスのような下宿先の仲間たちに助けられ、アレックスの“夢への挑戦”が始まる。
24時間コルセットをつけ、靴は小さめのサイズに12センチヒール、つけまつげや胸の谷間のメイクなどで「美」に磨きをかける。
そして勝者の考え方を身につけるため、エリアスからメンタルを鍛えるアドバイスをもらう。
めきめきと美しさを増していくアレックスは、地区大会の過酷な競争を乗り越え、夢を現実にしていくが……。
【REVIEW】
主人公のアレックスを演じるのは、フランスで“ボーダーレスな美女男子モデル”として活躍するアレクサンドル・ヴェテール。
ルーベン・アウヴェス監督は、もともとトランスジェンダーを主人公にアイデンティティについての映画を作りたいと思っていた。
そんな時にアレクサンドルとインスタグラムで出会い、彼のアンドロギュノス(男女両性を兼ね備えた存在)的な感覚を知ったとか。
アレクサンドルは女性になりたいわけではなく、自分自身の女性的な部分を強く感じているだけなのだと……。。
それをきっかけとして、監督はトランスジェンダーではなくアンドロギュノス的なテーマを扱うことに決めたという。
ただ純粋に夢を叶えるため「ミス・フランス」にチャレンジしたアレックス。
彼は、ミス・フランスという頂点を目指す他のライバルたちとなじめない。
そのうえ、SNSに振り回されて自分自身を見失いそうになる。
そんな時に家主のヨランダから「他人に自分の価値を決めさせるな」と言われる。
この言葉は、トランスジェンダーやアンドロギュノスであろうとなかろうと、誰の心にも響くのではないだろうか。
自分に自信を持て……たとえ結果がどうであろうと、自分の価値は自分で決めろ。
母親のような存在である家主のヨランダ、ドラァグ・クイーンのローラ、インド人のお針子など、個性的な仲間たちが住むシェハウス。
思えば、このシェハウスこそが多様性そのものなのである。
監督:ルーベン・アウヴェス
出演:アレクサンドル・ヴェテール イザベル・ナンティ パスカル・アルビロ ステフィ・セルマ
2020年 フランス 107分 配給:彩プロ
https://missfrance.ayapro.ne.jp/
4月2日(金)~テアトル梅田 4月16日(金)~シネ・リーブル神戸で公開
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