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【とっておきシネマ】『ONODA 一万夜を越えて』

毎週金曜日、夜9時からおおくりしている最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週ご紹介した映画は、フィリピン・ルバング島で終戦を知らないまま、およそ30年間生き続けた小野田寛郎さんの物語です。
2時間54分の上映時間を長いと感じないほど、引き込まれてしまいました。

©bathysphere ‐ To Be Continued ‐ Ascent film ‐ Chipangu ‐ Frakas Productions ‐ Pandora Film Produktion ‐ Arte France Cinéma

【STORY】
終戦間近の1944年。
軍の特殊訓練を受けた小野田寛郎は、劣勢のフィリピン・ルバング島でゲリラ戦を指揮するよう、命令を受ける。
出発前、教官から言い渡された最重要任務は“何が起きても必ず生き延びること”。
玉砕は決して許されず、死ぬ権利はない、ということだった。
そんな小野田を待ち構えていたのは、ルバング島の過酷なジャングルだった。
食料もままならず、仲間たちは飢えや病気で次々と倒れていく。
最後まで生き残った小野田と小塚金七は、二人三脚で生死を彷徨いながら潜伏していた。
ところが、ある日突然、小野田と小塚は島民らしき人間たちからの奇襲を受け、小塚は小野田の目の前で帰らぬ人となる。
ついに1人きりとなり、孤独の中で夜が明けていく日々を数えながら、ジャングルで息を潜める小野田。
見えない敵と戦い続けて一万夜を迎える頃、彼は”旅行者”と名乗る若い日本人の男・鈴木紀夫と出会う。
この青年との出会いによって、小野田の孤独な日々は終わりを迎えることに……。

©bathysphere ‐ To Be Continued ‐ Ascent film ‐ Chipangu ‐ Frakas Productions ‐ Pandora Film Produktion ‐ Arte France Cinéma

【REVIEW】
映画の冒頭、フィリピン・ルバング島に1人の日本人の若者がやって来る。
彼はジャングルにいるであろう小野田に聞こえるように、テープレコーダーで日本の歌を流す。
そして景色は変わり、カモフラージュの草を背負い銃を持った軍人が森の中から広い草地に出てくる。
その瞬間、「小野田さんだ!」と私は心の中で叫びそうになった。
47年前、テレビ報道で観たそのままの小野田寛郎さん(もちろん、俳優の津田寛治さんが演じているのだ)が画面の真ん中に立っている。
どこからか流れてくるその日本の歌を聞いて、小野田さんが涙を流す……そんなシーンから始まる。

©bathysphere ‐ To Be Continued ‐ Ascent film ‐ Chipangu ‐ Frakas Productions ‐ Pandora Film Produktion ‐ Arte France Cinéma

1974年3月、作戦任務解除命令を受けて51歳で日本に帰還した小野田寛郎さん。
当時の日本では彼の存在自体が衝撃的な事件として大きく報道され、社会現象にまでなった。
私は当時高校生だったので、この衝撃的なニュースはとても印象に残っている。
そして、30年という人生の大半をジャングルで過ごした彼の心の真実と、そのサバイバルな日々にとても興味が湧いたものだ。
私にとって、小野田さんの物語は映画化されれば是非観たい作品のひとつだった。
大げさに聞こえるかもしれないが「生きているうちにこの映画を観られてよかった」とさえ思う。

©bathysphere ‐ To Be Continued ‐ Ascent film ‐ Chipangu ‐ Frakas Productions ‐ Pandora Film Produktion ‐ Arte France Cinéma

『ONODA一万夜を越えて』は、フランス人のアルチュール・アラリ監督が独自の視点で描いたものである。
冒険をテーマに考えていた監督が、彼の父親から「何年も孤島で過ごしたある日本兵の驚くべき話」を聞いたことがきっかけだという。
台詞はほぼ全て日本語、日本人キャストはオーディションにより選考し、カンボジアのジャングルで4か月かけて撮影した。
欧米人が思い描くサムライのイメージは避け、単に日本人のアイデンティティだけではなく、万国共通の人道的な部分に言及したかったとか。
たしかに、ありがちな日本人兵士の描かれ方ではないことが新鮮で、魅力的に思える。

ジャングルでの日々、小野田は手帳に日付を書き込む。
その日付は、昭和21年2月……「小野田さん、もうとっくに戦争は終わっているよ」と切なくなる。
さらに昭和25年の元旦、小野田と小塚が崖の上に立ち「日本人として、そして軍人として今年も頑張ります」と敬礼する。
おそらく日本の方向に向かって……その律義さ、生真面目さに胸が熱くなる。
誰もが彼に対して思うことは、どうして30年もジャングルに潜伏していたのか? 本当に終戦を知らなかったのか? ということだろう。
ひょっとしたら小野田さん自身にも、その答えはわからなかったのかもしれない。
今年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門のオープニング作品に選ばれた、この作品。
観終った時にあなたの視点で感じることは、どんなことなのだろう?

監督・脚本:アルチュール・アラリ
出演:遠藤雄弥 津田寛治 仲野太賀 松浦佑也 千葉哲也 ほか
2021年 フランス、日本、ドイツ、ベルギー、イタリア 174分 配給:エレファントハウス
https://onoda-movie.com/
10/8(金)全国公開 関西では、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズ伊丹 TOHOシネマズ西宮OSなど。

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