毎週金曜日、夜9時からおおくりしている「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週ご紹介したとっておきの映画は、1959年に44歳で亡くなった天才ジャズシンガー・ビリー・ホリデイとアメリカ合衆国の対決。
音楽史上最も衝撃的な陰謀……その知られざる全貌を明かすサスペンス・エンターテインメントです。
【ストーリー】
1940年代、人種差別の撤廃を求める公民権運動の黎明期。
合衆国政府から反乱の芽を潰すよう命じられていたFBIは、絶大な人気を誇る黒人ジャズシンガーのビリー・ホリデイをターゲットにする。
ビリーの大ヒット曲「奇妙な果実」が人々を扇動すると危険視し、おとり捜査官として黒人捜査官ジミー・フレッチャーを送り込む。
ジミーは、肌の色や身分の違いも越えて人々を魅了し、逆境に立つほど輝くビリーのステージパフォーマンスに惹かれ、次第に彼女に心酔していく。
しかし、その先にはFBIの仕かけた罠や陰謀が待ち受けていて……。
【レビュー】
とにかく見応えがある。
まずは、ビリー役のアンドラ・ディの歌唱力と演技力だ。
永遠に聴いていたいと思うステージパフォーマンスと、タフでありながら脆いビリーが蘇ったかのような生々しく迫力のある演技は圧巻。
執拗にビリーに圧力をかけ罠を仕掛けるFBIには苛立ちを抑えられないが、おとり捜査官ジミーとのせつない関係は唯一やすらぎを与えてくれる。
そして、国を相手に静かに歌だけで対抗するという、激しくも哀しい物語に華やかさを添えるプラダの美しい衣装の数々。
それらすべてが、映画を見終わった後に複雑な余韻の波となって、心に何度も押し寄せてくる。
黒人へのリンチに静かに抗議する「奇妙な果実」という曲にじっくり耳を傾けてほしい。
感情に訴えない淡々とした表現の詩と歌唱によって、くっきりと浮かび上がる情景に慄然とする。
2020年、反リンチ法がアメリカの上院で審議はされたものの、いまだ通過していないという。
ビリーの死から60年以上も経つというのに……。
監督:リー・ダニエルズ
原作:ヨハン・ハリ『麻薬と人間 100年の物語 薬物への認識を変える衝撃の真実』(作品社)
出演:アンドラ・デイ トレヴァンテ・ローズ ギャレット・ヘドランドほか
2021年/131分/R15+/アメリカ /配給:ギャガ
https://gaga.ne.jp/billie/
2月11日(金)~新宿ピカデリー他全国公開
関西では、大阪ステーションシティシネマ 神戸国際松竹 MOVIXあまがさき などで公開
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