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【とっておきシネマ】『犬部!』&『83歳のやさしいスパイ』

毎週金曜日夜9時からおおくりしている最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。

梅雨が明けて猛暑突入!ですね。
暑中お見舞い申し上げます。
コロナ禍での2回目の夏ですが、熱中症にはくれぐれもご注意くださいね。

さて、今週の「とっておきシネマ」は、2つの作品をご紹介しました。
どちらも優しさにあふれたお話です。

©2021『犬部!』製作委員会

まずは、日本映画の『犬部!』
犬部というのは青森県十和田市にある北里大学獣医学部に実在したサークル。
行き場をなくした犬や猫を保護して、世話・しつけを行い、新しい飼い主を探す活動をした学生ボランティア団体。
現在も「北里しっぽの会」と名称を変え活動中。
その「犬部」を元に描いた、青春“犬ラブ”ムービー。
三度のご飯より動物が好きな獣医学生たちが、命を守るため奮闘し青春を駆け抜ける姿を描いた作品。

©2021『犬部!』製作委員会

【STORY】
花井颯太22歳、獣医学部の大学生。
大の犬好きで、アパートは保護動物だらけ。
周りからは変人扱いされても、目の前の命を救いたいという一途な想いで保護活動を続けている。
ある日颯太は、獣医学部の実験室を脱走した一匹の犬を救ったことから、動物保護活動サークル「犬部」を設立。
メンバーは、颯太と同じく犬好きの柴崎や、猫好きのよしみ、実験室にいた秋田など。
彼らは動物まみれの青春を駆け抜け、それぞれの夢に向かって羽ばたいていく。
颯太と秋田は動物の命を救うため動物病院へ、そして柴崎は動物の殺処分を減らすため動物愛護センターへ、よしみは研究者として大学に残る。
16年後、颯太が当事者となったある事件の報道をうけて、それぞれの想いで動物と向き合ってきた仲間たちが再集結するが……。

©2021『犬部!』製作委員会

【REVIEW】
この作品は、ただ動物愛護というテーマををきれいに描いているだけではない。
動物実験(現在は行われていないという)、殺処分、多頭飼育崩壊、町猫問題などの現実が描かれる。
大学の獣医学部で学ぶ若者4人が、それぞれ「動物の命を救う」という大きな目的に向かうアプローチが異なるのだ。
颯太は動物実験を断固拒否し、実験とは異なる方法で教授に納得してもらい、単位を取る。
一方、柴崎は辛い気持ちを抑えて、やらなければならないことをやり、卒業後は内側から現実を変えるという理想を持ち、あえて殺処分の現場へ飛び込んでいく。
よしみは動物の感染病研究者の道を選び、秋田は実家の動物病院を継いで、そこで何か活動できないかと模索する。
動物の命を救う道は一本道ではないのだ。
それぞれが選んだ道は、やがて一つの大きな希望にたどり着くはず。

©2021『犬部!』製作委員会

颯太のモデルとなったのは、獣医師の太田快作さん。
2004年に北里大学で「犬部」を立ち上げ、卒業後は動物病院勤務を経て動物病院を開業。
業務の傍ら、野良猫の避妊去勢手術や、多頭飼育崩壊の現場に赴き、治療を行っている。
その太田さんが獣医師を目指す若者に「何があっても目の前の動物の味方であってほしい」と語る。
これは獣医さんだけではなく、動物を飼う私たち一人一人が心に刻んでおきたい言葉。
もの言えない動物を飼う責任を自覚して、人間だけでなく動物たちの命も大切に思って欲しい。

原案:片野ゆか「北里大学獣医学部 犬部!」(ポプラ社)
監督:篠原哲雄
出演:林 遣都 中川大志 大原櫻子 浅香航大ほか
2021年 日本 114分 配給:KADOKAWA
https://inubu-movie.jp/
7月22日(木)~TOHOシネマズ梅田、西宮OS,109シネマズHAT神戸、OSシネマズミント神戸などで公開中

そして、もうひとつの映画は、アクションとは無縁の世界でいちばん“やさしい”スパイ映画『83歳の優しいスパイ』。
老人ホームに潜入した、チャーミングなおじいちゃんスパイが活躍するドキュメンタリー。

© 2021 Dogwoof Ltd – All Rights Reserved

【STORY】
「80歳~90歳の高齢男性募集」という新聞の求人広告が出されるところからこの映画は始まる。
広告主は探偵事務所で、老人ホームに潜入して、ある入居者に虐待が行われていないかを探る「スパイ」の求人。
多くの応募者の中から選ばれたのが、83歳のごく普通の男性セルヒオ。
彼は、4か月前に妻に先立たれたばかりで、新たな生きがいを探して応募したのだった。
スマホの扱いにも不慣れなセルヒオが、眼鏡だのペンだのに隠されたカメラを駆使、暗号なども使って老人ホームでの潜入捜査を繰り広げる。

© 2021 Dogwoof Ltd – All Rights Reserved

ドキュメンタリーだから、その様子に観客はハラハラしっぱなし。
あからさまに入居者の名前と部屋番号をメモしたり、探偵のロムロに大きな声で報告をしたり。
そのうち、心優しいセルヒオは、調査を行うかたわら、悩み多き入居者たちの良き相談相手となっていく…。
彼は、無事にミッションをやり遂げることが出来るのか。

© 2021 Dogwoof Ltd – All Rights Reserved

【REVIEW】
セルヒオが“スパイ”として活躍する舞台となるのは、南米チリにある聖フランシスコ特養ホーム。
施設の承諾を得て3ヶ月間カメラを廻して撮影された。
俳優はひとりも登場しない。
入居者たちも実名、探偵のロムロも本物の探偵、セルヒオも本気でスパイになりきる。
新しい入居者として潜入したセルヒオはスパイ活動も行いつつ、その優しい性格から、入居者たちの孤独な心を癒していく。
すぐに彼はホームで人気者になる。
果たして、潜入捜査は成功するのか。
そしてセルヒオ自身が施設の中で暮らし、入居者たちとの交流で感じとった真実とは……。
「映画館を出た後、親や祖父母に連絡したいと思ってもらいたい」これは、アルベルディ監督からのメッセージ。
セルヒオの嘘偽りのない優しさが、私たちにも伝染してしまうような……そんなドキュメンタリー映画。

© 2021 Dogwoof Ltd – All Rights Reserved

監督:マイテ・アルベルディ
出演:セルヒオ・チャミ― ロムロ・エイトケン
2020年 チリ・アメリカ・ドイツ・オランダ・スペイン 89分 配給:アンプラグド
http://83spy.com/
7月23日(金)~テアトル梅田 8月6日(金)~シネ・リーブル神戸で公開

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