毎週金曜日夜9時からの最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週は、『1秒先の彼女』という、とてもキュートなラブストーリーをご紹介しました。
ブレイクタイムにおおくりしたのは、この作品の挿入歌で♪Lost and Found という曲です。
主人公シャオチー役のリー・ペイユーの歌声でお聴きいただきましたが、映画の雰囲気が想像できる可愛い曲でしたね。
【STORY】
郵便局で働くシャオチーは、仕事も恋もパッとしないアラサー女子。
何をするにもワンテンポ早い彼女は、写真撮影では必ず目をつむってしまい、映画を観て笑うタイミングも人より早い。
コーラスをしても皆より先に歌いだしてぶち壊したり……と、とてもせっかちな人生を歩んでいる。
ある日、職場近くの公園でハンサムなダンス講師と出会い、バレンタインデーのデートを約束する。
ところが、目覚めるとなぜかバレンタインデーの翌日になっていて、バレンタインが消えてしまった…!?
消えた1日の行方を探しはじめるシャオチーは、街の写真屋店で身に覚えのない自分の写真を見つける。
手掛かりはその写真と、クローゼットで見つけた私書箱の鍵。
やがて、シャオチーは思いがけない「大切なもの」を思いがけない人から受け取ることになる……。
【REVIEW】
第57回金馬賞(台湾アカデミー賞)の5冠(作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞、視覚効果賞)に輝く、チェン・ユーシュン監督の最高傑作。
ラブストーリーらしくバレンタインの時期が背景だが、実は台湾には年に2回のバレンタインデーがあるという。
2月14日のほかにもう一つ、旧暦7月7日(今年は8月14日)の「七夕情人節」という夏のバレンタインである。
台湾ではこの夏のバレンタインデーの方が重要なイベントで、主に男性から女性にプレゼントを贈るらしい。
この物語は、そんな台湾の夏のバレンタインデーに起った奇跡のようなお話。
その奇跡の物語には、昔懐かしいレコードのA面とB面のように二人の主人公が描かれる。
一人は、ごくごく普通のアラサー独身女性シャオチー。郵便局に勤めている。
特に結婚を焦っているわけではないが、隣の席で勤務する若い後輩が羨ましいような腹立たしいような。
そんな彼女の頭によぎるのは「自分を愛そう、誰にも愛されないから」という言葉。
シャオチーはせっかち(?)で、何をしても人よりワンテンポ早く反応してしまう。
その先走ったワンテンポが溜まると、人生のどこかで時間の清算をしなければならないのかもしれない。
そして、もう一人の主人公は何事も人よりワンテンポ遅い……さて、誰なのか?
物語の後半でその人物のバレンタイン当日の行動があきらかになり、シャオチーのなくした1日の謎が解ける。
ラブストーリーであり、ファンタジーでもあるこの作品。
そんなこと起こるはずがないという展開ではあるものの、ラストにはヒロインと一緒に涙してしまう“純愛”が描かれている。
純愛とはいえ捉え方を変えたらちょっとストーカーっぽく感じるシーンもあるが、二人の間に生まれたタイムラグを巧くファンタジーにしている。
「ありえないけれど、あったら楽しいかも」という展開がとても新鮮。
主演のリー・ペイユーという女優さん、台湾の人気司会者でもあるそうだ。
彼女の演じる「ワンテンポ早い女子シャオチー」が凄くチャーミングで、友達になりたい!
監督・脚本:チェン・ユーシュン
出演:リー・ペイユー リウ・グァンティン ヘイ・ジャアジャア ダンカン・チョウ
2020年 台湾 119分 配給:ビターズ・エンド
https://bitters.co.jp/ichi-kano/
6月25日(金)から シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸などで公開