今週は、90年代の台北を舞台にした⻘春コンプレックス・エンタテインメント『ひとつの机、ふたつの制服』をご紹介しましょう。全⽇制と夜間部でひとつの机を共有するふたりの女子高校生。ふたりの制服は同じでも胸の刺繍の⾊は違う……そんなシャオアイとミンミンが、ひとりの男⼦校生を好きになってしまった……さて、どうする? どうなる?

Renaissance Films Limited ©️2024 All Rights Reserved.
シネマエッセイ
昭和から平成にかけて私が勤めていた職場の昼休み時間は、“講堂で卓球”というのがおきまりだった。お昼のチャイムが鳴ったら大急ぎでお弁当をたいらげ、歯を磨き、同僚と誘い合って5階までの階段をいそいそと上がる。緑色の台を講堂に広げ、老いも若きも参加して何となくの順番で交代しながら卓球を楽しむ。たかが昼休みの卓球、されどエキサイトするのが卓球。勝負となればふだんのイメージとは違う姿を垣間見せてくれる同僚たち。いつもおおらかだと思っていた人が案外セコイ(たとえばネット際にゆるく落としたり)手段で勝ったり、おとなしいはずの後輩女子が鋭いスマッシュを決めるたびに飛び跳ねてはしゃいだりなど。また、男女に関係なく相手に好感を持っていたら、笑顔で長くラリーが続くようにゆるやかな球が往復するが、犬猿の仲(?)のような間柄なら表情も硬く球も鋭い角度で叩きつけられ、「ケンカ腰⁈」と周囲が戸惑ったり……。私は、母親ほど年の離れた先輩に何故か目の敵にされ、いつも鬼のような形相でエンドラインとサイドラインの交わる角ギリギリにスマッシュされるのだった。そうなるとこちらも、やられたらやり《返す倍返し》と相成る。それでも卓球は実に楽しかった。
さて、その卓球。台湾は卓球の強豪国といわれ、卓球⼈⼝も多い。現在でも台湾の街中には卓球場が多く、ビルの中や⼤型ショッピングモールにも広い卓球場があるらしい。台湾映画『ひとつの机、ふたつの制服』の主人公シャオアイは、名門女子高の夜間部に通いながら、昼間は卓球場でアルバイトをしている。そこにふらっと現れた男子校生にシャオアイは好意を寄せる。ところが、彼に惹かれるのはシャオアイだけではなかった……という、青春あるある物語。日本と似ている90年代の台湾文化をふんだんに楽しみながら、自分の青春時代を懐かしく思い出す親近感あふれる作品である。

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1997年台北。受験に失敗し、強引な⺟の勧めにより名⾨⼥⼦校「第⼀⼥⼦⾼校」の”夜間部”に進学した⼩愛(シャオアイ)。同じ教室で同じ机を使うことになった全⽇制の成績優秀な⽣徒、敏敏(ミンミン)と “机友(きゆう)”=デスクメイトになる。夜間と全⽇制。制服は同じでも、胸の刺繍の⾊が違う。ある⽇、⼩愛は敏敏から学校をサボるために制服を交換することを提案され、次第に、⼩愛が敏敏からもらった全⽇制の制服を来てふたりで遊びに⾏くようになるなど⾏動がエスカレート。やがてふたりは同じ男⼦校⽣を想っていることに気づき……。

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監督:ジュアン・ジンシェン(荘景燊)|脚本:シュー・フイファン(徐慧芳)、ワン・リーウェン(王莉雯)|出演:チェン・イェンフェイ(陳妍霏)、シャン・ジエルー(項婕如)、チウ・イータイ(邱以太)
原題:夜校女生|英語題:The Uniform|2024|台湾|5.1ch|2:1|カラー|中国語|109分
Renaissance Films Limited ©️2024 All Rights Reserved.
提供:マクザム
配給:ムヴィオラ、マクザム
後援:台北駐日経済文化代表処台湾文化センター
公式サイト:https://www.maxam.jp/hitofuta/
公式X(Twitter):ID @hitofuta_eiga リンク:https://x.com/hitofuta_eiga
2025年10月31日(金)よりテアトル梅田、京都シネマ
2025年11月14日(金)よりシネ・リーブル神戸ほか全国順次公開
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