金曜の夜9時からおおくりしている最新映画情報番組『とっておきシネマ』の鳥飼美紀です。
今週は、実話をベースにしたフランス映画『アプローズ、アプローズ!』をご紹介しました。
刑務所の囚人たちが、なんと刑務所の外で演劇を上演する!
さて、その結末は……?
【STORY】
刑務所の囚人たちの為に、演技のワークショップの講師として招かれたエチエンヌ。
彼は、決して順風満帆とは言えない人生を歩んできた崖っぷち役者だった。
しかしエチエンヌの情熱は、囚人たちや刑務所の管理者たちの心を動かし、刑務所の外での公演を実現するまでになる。
演目は、不条理劇として有名な『ゴドーを待ちながら』。
とはいえ、思いも寄らぬ行動を取る囚人たちとエチエンヌの関係は常に危うかった。
今にも爆発しそうなハラハラドキドキの連続で、その爆弾は舞台の上でもいつ着火するかわからない。
しかし、彼らのその危なげな芝居は、むしろ観客や批評家からは予想外の高評価を受け、再演に次ぐ再演を重ね大成功。
そして遂にはフランス随一の大劇場パリ・オデオン座から、最終公演のオファーが届く!
果たして彼らの最終公演は、観衆の喝采の中で感動のフィナーレを迎えることができるのか?
【REVIEW】
ベースとなったのは、スウェーデンの俳優ヤン・ヨンソンが実際に体験した話である。
1985年、ヨンソンは刑務所で演劇のワークショップを行い、『ゴドーを待ちながら』を囚人によって上演することを引き受けた。
囚人たちは刑務所の管理者の支援を得て、スウェーデン国内のいくつかの劇場で上演することが許されたという。
演目となった戯曲『ゴドーを待ちながら』は、アイルランド出身の劇作家サミュエル・ベケットの作品である。
来るか来ないかわからない「ゴドー」と呼ばれる人物を待ちながら、ただ会話をしているふたり組の様子を描いた戯曲だ。
ふたりがそれぞれどんな人生を歩んで来たのか、何故ゴドーを待っているのか、そもそもゴドーとは一体何者なのか……という説明は一切ない。
ただ、ゴドーというのは「GOD(神)」のことではないか……という説があるとか。
この戯曲は不条理演劇の元祖と言われ、数多くの演劇・映画・小説などに影響を与えてきた。
最近では、アカデミー賞@国際長編映画賞を受賞した日本映画『ドライブ・マイ・カー』の劇中劇としても登場している。
刑務所の囚人たちが、寓話ではなく不条理劇を上演、しかも塀の外の劇場で……その意外性に興味がそそられる。
戯曲の登場人物ふたりは、来るか来ないかわからないゴドーを待っているが、演じる囚人たちは塀の外に出て自由になれる日を待っていた。
映画の中で誰かが言った「人生は刑務所の外にある」という言葉と、クライマックスでの“予想とは違った意味のスタンディングオベーション”が、印象に残る。
監督:エマニュエル・クールコル
出演:カド・メラッド(エチエンヌ) マリナ・ハンズ ロラン・ストーケル
2022年 / フランス / 105分 / 配給:リアリーライクフィルムズ
http://applause.reallylikefilms.com/
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