《鳥飼美紀のシネマエッセー》
先日、洗面所の排水口にお気に入りピアスの片方を落としてしまった。
人気ブランドのもので、シンプルで優しいイエローのクォーツ。初めてピアスを開けた17年前から大切に使っていたものだ。
片方だけ残ったそのお気に入りのピアスを、さてどうしようか? と思っている時に、この作品に出合った。
映画『ソウルメイト』にも片方ピアスのシーンが出てくる。
主人公は2人の女の子。
ハウンが学ぶ済州島のとある小学校にミソが転校生としてやってくる。
真面目なハウンと自由奔放なミソは、その対照的な性格にも関わらずミソの転校初日から“大親友”になる。
2人に唯一共通しているのは……絵を描くのが好きなこと。
ハウンは写実的な鉛筆画を、ミソは個性的な抽象画を得意とし、絵画は彼女たちの未来に大きく関わっていく。
ハウンは17歳の誕生日にピアスの穴を開ける。
ハプニングがあり片方だけしか開けられなかったハウンに、ミソは彼女の名前をかたどったピアスをプレゼントする。
ハウンは「私がもう片方を開けるまで、つけていて」とミソにピアスのもう片方を渡す。
その昔、ハートを分割したペンダントをカップルでつけるのが流行ったが、この映画では親友同士がピアスの片方を交換する。
そうか……ピアスは対でなくてもいいのだ。片方だけ残ったお気に入りのピアスと、ニュアンスの似た別のピアスを組み合わせるのもお洒落かもしれない。
映画では、それから数年後に今度はハウンがミソの名前をかたどったピアスをプレゼントする。
これで2人は片方に自分の、もう片方に親友の名前をかたどったピアスをつけて生きるのだ。
ところが、2人が27歳の時にハウンはミソの前から忽然と姿を消す……。
タイトルの『ソウルメイト』とは、soul(魂)とmate(仲間)を組み合わせた造語で、「魂の友」という意味らしい。
男女を問わず、前世から何度も一緒に生まれ変わって関わり合うというソウルメイト。
どんなに長く、どんなに遠く離れていても会えば一瞬で昔に戻れる。
それは魂で繋がっているから。その魂を象徴するのがハウンとミソの場合はピアスなのだ。
片方だけ残ったピアスの使い方のヒントを私にくれた映画『ソウルメイト』は、そのあまりにドラマチックな結末が、哀しく心に残る物語である。
【ストーリー】
公募展で大賞に選ばれた一作。それは「作者・ハウン」による高校生のミソがモチーフの絵画だ。
ミソとハウンは、小学生からの大親友。絵を描くのが好きな2人は、性格も価値観も育ってきた環境も違うが、大切な存在だった。
しかし、ジヌとの出会いが2人の運命を大きく変えていく。
想い合いながらもすれ違い、疎遠になっていた16年目のある日、ハウンはミソに“ある秘密”を残して忽然と姿を消してしまう。
思いもよらない壮絶な半生が紐解かれるとき、涙なしでは観られない“2人だけの秘密”が明らかになる。
監督:ミン・ヨングン
出演:キム・ダミ、チョン・ソニ、ピョン・ウソク
2023|韓国|124分|ビスタ|5.1ch|原題:소울메이트|英題:SOULMATE|字幕翻訳:本田恵子 配給:クロックワークス|映倫:PG12
公式サイト:https://klockworx-asia.com/soulmatejp/ 公式X:@soulmatejp
2024年2月23日(金・祝) 新宿ピカデリーほか全国公開
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