今週のとっておきの1本は、時代劇の枠を超えた極上のエンターテインメント『木挽町のあだ討ち』をご紹介します。直木賞と山本周五郎賞をW受賞した永井紗耶子さんの同名小説が原作です。やさしい嘘に包まれた、心温まる爽快な人情ドラマ。イオンシネマ三田ウッディタウンでも上映されますよ。

Ⓒ2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 Ⓒ2023 永井紗耶子/新潮社
シネマエッセイ
私は、知る人ぞ知るサザンオールスターズファンである。半世紀近い年月をサザン一筋に生きてきた。若い頃はサザンライブのために北は北海道、南は福岡まで飛び回っていた。ところが、いつの頃からかライブチケットがさっぱり当選しなくなった。サザンのファンが驚くほど増えたのか、チケット抽選のシステムが進化(?)したのか、私のくじ運が絶えてしまったのか……。それを実感したのが、10年ほど前のサザン22年ぶりの日本武道館公演であった。応援団の先行発売で落選、チケットサイトの抽選発売でも落選、一般発売(早い者勝ち!)もGETできなかった。あきらめきれず、チケットはないけれど武道館なら近くで音漏れが聴こえるかもしれないと、呆れる家族を説得して友人と2人で東京に向かった。夜のライブまでの時間つぶしに「せっかくだから、歌舞伎を観ようか」ということに。調べてみると東京の歌舞伎座には関西にない「一幕見」というシステムがあるらしい。4階席でリーズナブルに一幕だけ見られるのだ。「それだ!」ということで、銀座にある歌舞伎座へ向かう。事前に1階で並んで、時間になると4階まで上がって、そこでも並んで待つ。行列には外国人観光客らしい人も結構いた。4階席は舞台からかなり遠いが、観光ついでのちょっと見にはちょうどいいカジュアルさである。演目は憶えていないが、大満足した。新しい歌舞伎座になってすぐの頃だったので、上階にある歌舞伎座ギャラリーや屋上庭園なども見物し、地下のお土産コーナー(木挽町広場というらしい)もあれこれ楽しんで、有意義な時間を過ごした。本来は日本武道館の音漏れサザンが目的の東京行きだったが、今でも記憶に残っている粋な歌舞伎見物だったと思う。肝心の音漏れ……微かに聴こえ、これも満足。
映画『木挽町のあだ討ち』の舞台となる江戸時代の木挽町というのは、現在の東銀座界隈。ちょうど歌舞伎座のあるあたりだという。地図で確認すると歌舞伎座の真ん前から「木挽き町通り」という道がある。江戸城改築にあたり木挽(木曳)職人を多く住まわせていたのが、その名の由来だそうである。その木挽町で起こった“見事なあだ討ち”の本当の顛末が徐々に紐解かれていく本作は、エンターテインメントらしい心地よき結末で、こちらも大満足と思える。

Ⓒ2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 Ⓒ2023 永井紗耶子/新潮社

Ⓒ2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 Ⓒ2023 永井紗耶子/新潮社
江戸・木挽町にある歌舞伎小屋「森田座」にひとりの田舎侍が訪れる。彼、美濃遠山藩の加瀬総一郎は、一年半前に起き、江戸の語り草となった仇討ちの顛末が知りたいのだという。総一郎の縁者である伊納菊之助が、いかにして、菊之助の父・清左衛門を殺害した男、作兵衛の首を討ち取ったのか。仇討ちには腑に落ちぬ点が幾つかあった。この事件に立ち会った人々に、つぶさに聞き込みを続けるうち、あまりに意外な真相が明るみになる。

Ⓒ2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 Ⓒ2023 永井紗耶子/新潮社

Ⓒ2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 Ⓒ2023 永井紗耶子/新潮社

Ⓒ2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 Ⓒ2023 永井紗耶子/新潮社
原作:永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』(新潮文庫刊)
監督・脚本:源 孝志
音楽:阿部海太郎
主題歌/「人生は夢だらけ」椎名林檎 (EMI Records / UNIVERSAL MUSIC)
出演:柄本 佑/長尾謙杜 瀬戸康史 滝藤賢一/山口馬木也 愛希れいか イモトアヤコ 冨家ノリマサ 野村周平/高橋和也 正名僕蔵 本田博太郎 石橋蓮司/沢口靖子 北村一輝/渡辺 謙
公開:2026年2月27日(金)全国公開
企画協力:新潮社
配給:東映
映画公式ホームページ:https://kobikicho-movie.jp
映画公式X:https://x.com/kobikicho_movie
映画公式Instagram:https://www.instagram.com/kobikicho_movie/
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