毎週金曜日夜9時からおおくりしている映画情報番組『とっておきシネマ』の鳥飼美紀です。
今週は、11月20日(金)公開の『家なき子 希望の歌声』をご紹介しました。
【STORY】
フランスののどかな村。
心優しく勇敢な11歳の少年レミは、優しい母親と幸せに暮らしていた。
ところが、10年ぶりに出稼ぎから帰った父親から「おまえは捨て子だった」と聞かされる。
拾われていたときに着ていた高級な産着と、レミの耳に残る子守歌だけが出生の謎を解く鍵。
本当の親からの礼金をもらう目的でレミを拾った父親は、その当てが外れ、レミを旅芸人のヴィタリスに売ってしまう。
ヴィタリスはレミの歌声に才能を見いだし、歌のレッスンや読み書きを教え、父親のようにレミを導きながら旅をする。
旅芸人ヴィタリスの一座には犬のカピと猿のジョリクールがいて、いつしか彼らとレミは強い絆で結ばれていく。
ある時、レミの本当の母親がロンドンにいるとわかり、ヴィタリスとレミはロンドンへと向かう。
しかしそこに待ち受けていたのは……。
【REVIEW】
フランスの作家、エクトール・アンリ・マロが1878年に発表した原作は、日本でもアニメ化され親しまれてきた。
今回の作品では、原作にはなかった“歌”という天賦の才をレミに与えている。
レミとヴィタリスが出会って間もなくの頃、美しい大自然の中でレミが歌うシーンがある。
この時、歌うことによって初めてレミの心は満たされ、そして解放され、「何があっても歌をやめない」と心に誓うのだ。
美しい高原の景色と、目を閉じ両手を広げて歌うレミの清々しい声に心が洗われるような気がした。
また、ヴィタリスがヴァイオリンでメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を奏でるシーンもある。
実は昔、彼は高名なヴァイオリニストだったのだが、家族を失ったことへの自責の念にさいなまれていたのだった。
戻りたくても戻れない過去への思いがヴァイオリンの音色に絡みつき、いつまでも心に響く。
レミの清らかな歌声、ヴィタリスの切ないヴァイオリンの調べ……音楽の力がよりドラマティックに作品を彩っている。
この長い物語を語るのが老人となったレミ(原作では大人になったばかりのレミ)である。
その老人レミを演じたのは、名作『ニューシネマパラダイス』(1989年)で、中年になった主人公サルヴァトーレを演じたジャック・ペラン。
おだやかな優しいまなざしのその先に、ヴィタリス、犬のカピ、猿のジョリクールとともに過ごした少年の日々が甦っていたはず。
親子ではないのに親子以上の強い絆に結ばれた、ヴィタリスとレミ。
命がけでレミを守ってくれたヴィタリスを生涯忘れないレミの真心が、ある形となってラストにクローズアップされ、心を打たれた。
原作:エクトール・アンリ・マロ「家なき子」(上下巻 新潮文庫)
監督・脚本:アントワーヌ・ブロシエ
出演:ダニエル・オートゥイユ マロム・パキン ジャック・ペラン
2018年 フランス 109分 配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
http://ienakiko-movie.com/
11月20日(金)から、シネリーブル梅田、109シネマズHAT神戸 シネリ-ブル神戸などで公開中
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メール:honey@fm822.com
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