毎週金曜日、夜９時からおおくりしている最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週のとっておきシネマは、３０年ぶりにその映像が甦った伝説の音楽映画『稲村ジェーン』の特集をおおくりしました。
ＢＧＭも含めて、すべてアルバム「稲村ジェーン」からおおくりした名曲たちも一緒に楽しんでいただけたでしょうか。
『稲村ジェーン』……１９９０年公開の日本映画。
監督はサザンオールスターズの桑田佳祐さんで、観客動員数３５０万人という大ヒットとなりました。
そして、♪真夏の果実 ♪希望の轍 など、サザンを代表する名曲を生み出した伝説の音楽映画でもあります。
その『稲村ジェーン』が、サザンデビュー記念日の６月２５日にブルーレイ＆ＤＶＤとなって３０年ぶりに発売されました。
ハニーのサザン番長・わたくし鳥飼美紀が、その「稲村ジェーン」についてたっぷりお話しさせていただきました！
【STORY】
１９６５年（昭和４０年）。
湘南・稲村ヶ崎で、骨董屋のやとわれ店長をしているサーファーのヒロシ。
骨董屋の主人は病気療養中。
夏の終り、チンピラのカッチャンが店にやって来る。
カッチャンは、ヤクザのボスの壺を横流しして逃げているマサシを追っている。
マサシはヒロシの友人でラテンバンドのリーダー。
カッチャンの脅しに慌てたヒロシとマサシは、サーフィンボードを乗せたミゼットに乗って一旦千葉に逃げる。
その帰りに、ふたりは横須賀で魅力的な女性・波子と知り合い３人で稲村ケ崎に戻って来る。
そして、ヒロシ、マサシ、なぜかチンピラのカッチャンも、波子を中心にして奇妙な友情を育んでいく。
さて、マサシが生演奏をする渚のレストラン「ヴィーナス」のマスターには、みんなの耳にタコができるほどの口癖がある。
「２０年前、轟音とともに稲村の浜に立った伝説の大波“稲村―ジェーン”。その大波に立ち向かった３人の男。彼らは今も稲村のどこかであの大波を待っている」というもの。
折しも、稲村ケ崎に台風が近づいていた。
さぁ、伝説の２０年に一度の大波はやってくるのか～。
【REVIEW】
３０年前、興行成績は抜群だったが、この映画の出来についてはけっこう辛口なものが多かったと記憶している
リアルタイムに映画館で観た私も、音楽は最高だったけれど内容が全く入ってこなかった……というのが正直な感想だった。
クライマックスシーンの意味がつかみきれず、「やはり天才の表現するものは凡人にはわからないものか」と……。
しかし、今回もう一度観た感想は……瑞々しい青春が描かれている素敵な作品だったのだということ。
イマを生きる若者と、過去を過去にできないかつての若者……世代の違う２つの青春が描かれている。
不思議なファンタジー的クライマックスシーン、かつて全く理解できなかったシーンを抵抗なく受け入れている自分に驚く。
私が歳を重ねて理解力が深まったのか、それとも長い間サザンファンとして生きてきて、すっかり・しっかりサザン色に染まったのか？
桑田さん自身も改めて見直して涙が出たとコメントしていたが、私も言葉にできない感動に涙が浮かんできた。
あきらかに私の青春とは違う形の青春が描かれているのだが、これからもずっと大切にしたい青春映画だ。
新幹線で移動中だった桑田さんが「湘南、稲村ケ崎に〈伝説の大波〉を待っている人々がいる」という雑誌のコラムを目にした。
それがこの映画のはじまりで、実際に稲村ケ崎には「伝説の大波を待つ人々」がいた～ということなのだ。
そして作詞家で脚本家の康珍化さんに声をかけ、そこから走り出し実現した企画だったそうだ。
キャストが、今から思うと凄い！
主役の４人の若者、加勢大周、金山一彦、的場浩司、清水美砂はオーディションで決定。
主役中の主役、加勢大周さんが凄くカッコよくて、なかなかのやんちゃな青年を好演している。
そのほか、伊武雅人、草刈正雄、尾美としのり、伊東四朗、泉谷しげる、伊佐山ひろ子、設楽りさ子、寺脇康文や嘉門達夫、小泉今日子！
書ききれない……。
原坊や毛ガニさんなどのサザンメンバー、もちろん桑田さん本人も盲目のシンガーという設定で、劇中で歌を披露している。
監督・音楽:桑田佳祐
1990年 日本 120分 配給：東宝
https://special.southernallstars.jp/inamurajane/
～暑かったけどよぉ、短かったよな、夏～
昭和４０年、サーフィンが始まって、まだ日も浅い湘南・稲村ケ崎の風と波と音楽の物語。
公開から３０年を経て、あらたな感動と過去への懐かしい思いがこみ上げてくる作品。
