【とっておきシネマ】『アンネ・フランクと旅する日記』

毎週金曜日、夜９時からの最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」鳥飼美紀です。
今週ご紹介した映画は、ベルギー・フランス・ルクセンブルク・オランダ・イスラエル合作の『アンネ・フランクと旅する日記』。
第2次世界大戦下に、ユダヤ人の少女アンネ・フランクが綴った「アンネの日記」を原案に描いたアニメーション映画です。

© ANNE FRANK FONDS BASEL, SWITZERLAND

アンネ・フランクはドイツ生まれのユダヤ人の少女。
1942年６月１２日、13 歳の誕生日に父・オットーからチェック柄の日記帳をプレゼントされます。
いつも～親愛なるキティーへ～という言葉で始まるアンネの日記。
キティーというのは彼女の想像上の親友なのでした。
アンネはその日記に、ナチスから身を潜めていた隠れ家での２年間の生活や初恋などを綴っています。
1945年、強制収容所でアンネは15歳と9ヶ月の生涯を終えました。
残された『アンネの日記』は1947 年、アウシュヴィッツを生き延びたアンネの父オットー・フランク氏によって初出版され、今年で 75 周年。
「世界記憶遺産」にも登録され、「世界で最も読まれた 10 冊」のうちの 1 冊なのです。

© ANNE FRANK FONDS BASEL, SWITZERLAND

【STORY】
現代のアムステルダム、ある嵐の夜。
博物館〈アンネ・フランクの家〉に保管されているオリジナル版「アンネの日記」に異変が起きた。
突然、文字がクルクルと動き始め、アンネの空想の友達キティーが姿を現したのだ。
キティーは時空を飛び越え、親友アンネと再会し、いろいろなことを語り合う。
学校での出来事、恋、アンネの空想について、隠れ家生活の毎日 などなど……。
現代に戻ったキティーは、歴史的に重要な“書物”である日記を盗んだと、追われる身になってしまう。
キティーが時を翔け、街を駆け抜ける……そして、戦争の終わりにアンネの身に何が起きたのかを突き止めようとするキティー。
それを追い求めるうちに彼女は、現代にも世界中の紛争地帯から逃げまどう人々がいることに気付く……。

© ANNE FRANK FONDS BASEL, SWITZERLAND

【REVIEW】
この物語の主人公は、アンネ・フランクの空想上の親友・キティーである。
嵐の夜にアンネの日記から姿を現したキティーが日記を開けて読もうとすると、時空を超えてアンネの生きていた時代に飛んでいく。
そして、キティーが日記を閉じたり手放したりすると、現代に戻ってくるのだ。
その現代では、博物館から日記を盗んだと警察などから追われるキティー。
変装をして潜りこんだ図書館で彼女はある事実を知るが、そのシーンには誰しも心を打たれるだろう。

監督・脚本はアリ・フォルマン。1962年、イスラエルに生まれた。
彼の両親は、偶然にもアンネたちと同じ週にアウシュヴィッツに到着したという。
幸いにも生き延びた両親から、彼はアウシュビッツの恐ろしい話を聞きながら育った。
そんなフォルマン監督がこの作品に込めたメッセージは、アンネの最期をたどる旅から戻ったキティーの行動によって明らかにされる。
アンネが願い続けた「誰もが尊重されるべき世界」をめざし、キティーは立ち上がるのだ。
過去から現在、そして未来へと、アンネからの希望のバトンはつながれていくはずだと信じたい。
2022年の春、今この時だからこそ観ておきたい作品である。

ボイスキャスト：ルビー・ストークス （キティー役）　エミリー・キャリー （アンネ・フランク役）
2021年/ベルギー・フランス・ルクセンブルク・オランダ・イスラエル/99分/配給：ハピネットファントム・スタジオ
https://happinet-phantom.com/anne/
３月１１日（金）～全国公開　関西の劇場はTOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズ西宮など

そして、「アンネのバラの教会」が西宮にあるのをご存じでしょうか？
アンネの父オットー氏から贈られた「アンネの形見」と名付けられた美しいバラが５月には満開になるそうです。
教会にはアンネの遺品や貴重な資料などが展示されているので、一度訪れてみてはいかがでしょうか。
詳しくは「アンネのバラの教会」のサイトで確認を。
https://www.annesrose.com/