みなさま「おばんです」山形県出身の内藤美保がお送りする「きてみで(来てみて)東北」。
この番組は東北各地の紹介と、東北弁で語る民話をお届けしています。
今日紹介する東北の話題は、青森県八戸市で、2月17日月曜から20日木曜に行われる「八戸えんぶり」です。
国の重要無形民俗文化財「八戸えんぶり」は、八戸地方に春を呼ぶ豊年祈願の郷土芸能です。
えんぶりの名は田をならす農具「えぶり」や、「いぶり」(ゆすぶり)に由来すると言われていて、
冬の間眠っている田の神をゆさぶり起こし、田に魂を込める儀式とされています。
えんぶりの起源は、伝説も含め様々な説がありますが、鎌倉時代の始め、南部氏の祖・南部光行(なんぶみつゆき)が奥州の地にやってきた頃に始まったというのが通説です。
奥州で迎える初めての正月、酒の勢いで、抜刀乱舞となった家来たちの騒ぎを機転を利かせた農民・藤九郎(とうくろう)がにぎやかに田植歌を歌い、
農具を手に持って踊ることで収めました。この出来事が、えんぶりの起源だと言われています。えんぶり組は、親方・太夫・舞子・お囃子などの総勢20〜30人で構成されています。
えんぶりの舞は、太夫(たゆう)と呼ばれるえんぶりの舞手が、馬の頭をかたどった華やかな烏帽子を被り、頭を大きく振る独特の舞です。
先頭に立つ太夫を、藤九郎(とうくろう)と呼びます。えんぶりには、「ながえんぶり」と「どうさいえんぶり」があり、
ながえんぶりは、うたや仕草がゆっくりしており、優雅な舞が特徴。
それに対し、どうさいえんぶりは、うたも仕草もテンポが速く、勇壮華麗なえんぶりです。
その舞は、稲作の一連の動作である、種まきや田植えなどの動作を表現したものです。
毎年2月17日の早朝、えんぶり組が長者山新羅神社に集まり、本殿の前でえんぶりの摺り(すり)を奉納します。
冬の早朝の、冷たく澄み切った空気の中、神前で行われるえんぶりは、厳かな雰囲気で行われます。
奉納を終えた各えんぶり組は、行列を組んでまちを練り歩きます。
中心街に集結した30数組による一斉の摺りは圧巻で、数あるえんぶり行事の中でも、最大の見どころの一つとなっています。
八戸市公会堂や、市庁本館前広場などでえんぶり公演が行われますが、特におすすめは、明治から大正時代の財閥の邸宅「更上閣」の庭園で行われる「お庭えんぶり」です。
かつては、「だんな様」と呼ばれる大地主や有力商家の土間や座敷で披露されることもあったえんぶり。
そんな昔の風情を再現した「お庭えんぶり」が期間中、毎日2回、夕方5時と夜の7時15分から行われます。
夜の庭園で披露されるえんぶりは、昼とはひと味違う幻想的な雰囲気。
甘酒と八戸せんべい汁を味わいながら、お屋敷のだんな様気分でえんぶりを鑑賞する贅沢なひとときを過ごすことができます。
今回は青森県八戸市で、2月17日から20日に行われる「八戸えんぶり」を紹介しました。
ではここから、東北弁で語る民話をお送りします。今回は青森県で語られていた民話「しがまの嫁コ」をお送りします。
お話の中に出てくる
「しがま」は「つらら」
「なるにきすた」は「なりにきました」
「わあ」は「わたしは」という意味です。