毎週金曜日夜9時からおおくりしている最新映画情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
12月に入り、三田でも「サンタ×三田プロジェクト」が始まりましたね。
今月の「とっておきシネマ」もラストソングは毎週クリスマスソングで彩りますよ~♪
さて今週ご紹介したとっておきの映画は、フランス映画『ローラとふたりの兄』という作品です。
軽やかなフランス流ユーモアたっぷりで、兄妹愛・家族愛を描いた作品で心を暖めてくださいね。
【STORY】
フランス西部の都市・アングレーム。
弁護士のローラには、眼鏡士のブノワと解体業者のピエールという、ちょっと困った2人の兄がいる。
3兄妹は、死別した両親の墓参りで月に一度は集まることが習慣になっている。
ある日、ブノワの3度目の結婚式、大遅刻をしてきたピエールの失礼なスピーチが原因で兄弟喧嘩が勃発。
そんな中、ピエールは深刻な仕事のトラブルを抱え、新婚早々のブノワは妻とすれ違うことに……。
そして、離婚調停の依頼人だったゾエールとの恋が始まったローラは、病院で“ある事実”を告げられて……。
【REVIEW】
タイトルが平凡なせいか前のめりに興味が湧いたわけではないが、観てみるととてもハートフルなお話。
ちょっと可笑しな大人たちが繰り広げるコメディでありながら、兄と妹、夫と妻、親と子が問題を抱えながらも日常をひたむきに生きる姿に心打たれる。
映画は観てみないとわからない……と、あらためて思う。
眼鏡士のブノア、解体業に携わるピエール、そして弁護士ローラの兄妹3人の両親は既にいない。
毎月、月初めの木曜日に3人揃って両親の墓前に集まり、近況報告やら何やらの末に小さな言い争いになる。
仲が悪い訳ではないが、それぞれの性格や価値観、環境のちょっとした違いからモメてしまう。
長兄ブノアの3回目の結婚式で、ピエールは花嫁の名前を忘れてしまい大ヒンシュクを買う……そんなシーンから始まるこの物語。
最初から最後まで、クスッと笑えるフランス式小さなユーモアが満載な上に、ラストに繋がる伏線も見逃せない。
ローラが交際を始めたゾエールの「姉が7人もいる末っ子」という家庭の事情が、ふたりの人生にどんな影響を与えるのかを想像してほしい。
映画は観てみないとわからない・・・と言ったが、実は観てもわからないことが隠されていることもある。
問題を抱えながらも日常をひたむきに生きる登場人物たちは、フランスで暮らす人たちの中でも恵まれている階層の人間なのだという。
彼らの悩みや問題は、彼らの持つ情報・人脈・経済力や善意で解決できるが、逆に言うと普通の人たちではそう巧く事は運ばないのだよ……と。
フランスという国の本当の姿を知らない私のような人間にとっては単純にハートフルな作品に見えても、実は監督のあたたかくも鋭い社会批判が隠されているのだ。
その監督とは、長男ブノアを演じているジャン・ポール=ルーヴという俳優で、今年風に言えば二刀流ということになるだろうか。
彼の前作『愛しき人生のつくりかた』(2014)は、フランスで100万人を動員する大ヒットを記録したというから、こちらも観てみたい。
ジャン・ポール=ルーヴが描く、繊細で味わい深い人生ドラマ『ローラとふたりの兄』は、この年末に特におすすめしたい作品である。
監督:ジャン・ポール=ルーヴ
出演:リュディヴィーヌ・サニエ ジョゼ・ガルシア ジャン=ポール・ルーヴ ラムジー・ベディア ほか
2018年/フランス/105分/配給:サンリスフィルム ブロードメディア
https://senlisfilms.jp/lola_and_bros/
2021年12月10日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
関西では、12月17日~シネリーブル梅田、京都シネマ 12月24日~シネリーブル神戸などで公開