毎週金曜日、夜9時からおおくりしている最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週ご紹介した映画はドイツ製作の『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』という作品。
人間のアルマとアンドロイドのトムが繰り広げる、クスっと笑えてほんのりビターなラブロマンスですよ。
【STORY】
ベルリンのペルガモン博物館で働く科学者アルマ。
楔形(くさびがた)文字の研究に没頭しその研究資金を稼ぐため、とある企業が極秘で行う特別な実験に参加することに。
その実験とは、アルマの性格と要求に合致するように造られた、ヒューマノイドロボットのトムと3週間共に暮らすこと。
そして、アルマの前に現れたのは、紺碧の瞳でアルマを熱く見つめるハンサムなトム。
初対面にもかかわらず、積極的に口説いてくる彼は、全ドイツ人女性の恋愛データを学習し、アルマの性格とニーズに完璧に応えられるようプログラムされていた。
そんなトムに課されたミッションは、“アルマを幸せにすること” ただひとつ。
献身的でロマンチックなトムのアルゴリズムは、過去の傷から恋愛を遠ざけてきたアルマの心を変えることが出来るのか――?
【REVIEW】
アルゴリズムとは? この映画の中で何度も出てくる言葉だが、皆さんご存知だろうか?
問題を解決するための方法や手順のことをアルゴリズムというらしいが、私はその言葉を初めて知った。
アルマに結構冷たくあしらわれるトムが、何度も何度もその問題解決に向けて己を修正して臨むのは、けなげとも思える。
作品公式サイトに掲載された著名人コメントには「コメディ」という言葉がたくさん見受けられるが、これはコメディなのだろうか?
私はあまり笑えなかった……面白くないという意味ではなく、楽しむというより真剣に観てしまったのだ。
“アルマを幸せにする”というミッションを達成するためだけに存在するトム……
自分が快適に過ごせるように、何もかもピッタリ合わせてくれる異性は理想かもしれない。
しかし、秘書や執事ならわかるが、パートナーとしてはどうだろうか?
もしかしたら、かなりのストレスにもなり得るのではないか?
作品の中でも、アルマがすべてにおいて完璧なトムに八つ当たりするシーンが描かれるが、パートナーとは、ともに楽しんだり喜び合うのはもちろん、意見が食い違ったり、喧嘩したりしながら関係を築いていくものではないかと考えさせられる。
現在、人間と同じ外見で、しなやかな動作と流ちょうな言葉でコミュニケーションを取れるロボット(アンドロイド)はまだ存在していない(と思う)。
だが太古の昔、人間が鳥のように空を飛べるとは思っていなかったはずが、現代は宇宙船で月や火星にまで行こうかというほど科学は発展している。
これから先、全く人間と同じ外見の完璧な思考と知能を持ったアンドロイドを、パートナーにすることが当たり前にならないとは言えないのだ。
その時、私たち人間は何を得て何を失うのか……そんなことを真面目に考えてしまった。
とはいえ、透き通るような美しい瞳のトムにすべてをフォローしてもらう経験を、一度はしてみたいと思わないでもない。
監督:マリア・シュラーダー
出演:ダン・スティーヴンス マレン・エッゲルト(この作品で、ベルリン国際映画祭俳優賞受賞) ザンドラ・ヒュラー ハンス・レーヴ
2021年 ドイツ ドイツ語 107分 配給:アルバトロス・フィルム
https://www.imyourman-movie.com/
2022.1.14(Fri) 新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー
関西では、シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸など