今週のとっておきの1本は、イギリスの文豪チャールズ・ディケンズが我が子のために書き下ろした『私たちの主の生涯』(「The Life of Our Lord」)を原作としたアニメーション映画。イエス・キリストの生涯とディケンズの人生を時を超えてつなぐ物語です。

©2025 MOFAC Animation Studios LLC.
シネマエッセイ
最近、旅に出ることが少なくなった。親の介護や大型犬と暮らしていることなど、家を空けることが気軽にできないという理由からである。私にとって非日常を体感できる旅は、ふだんの生活でのストレスを発散させ、明日への活力を与えてくれるものだ。非日常という点で、働き盛りの若い頃は旅館よりホテルを予約することが多かった。
そう言えば、昔はホテルの客室に「聖書」が必ずと言っていいほど置かれていたような気がする。ベッドサイドの引き出しに必ず……。なぜ、聖書が置かれているのか深く考えることもなかった。ただ、ホテルは外国人も多く利用するからかと思っていたが、外国人全てがキリスト教信者とは限らない。今になってネットで検索してみると、宗教団体がホテルに寄付していることが多かったらしい。布教活動にもなるし、信者にとっては旅の一日が終わって部屋でくつろぐときに聖書が備え付けてあれば嬉しい。そんな理由からだろうが、多様性が当たり前になった現在では、聖書のみを客室に置くホテルも少なくなったようである。
私は特定の宗教を持っていないが、訳あってイエス・キリストの生涯を色々読み漁った時期がある。その中で印象に残っているイエスの言葉がある。「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい」聖書に出てくるこの言葉は、罪を犯した女性が石打の刑に処されそうになった時にイエスが発したもので、人々は誰一人として女性に向かって石を投げることができなかったという。一度も罪を犯したことのない人間などいない。小さな嘘をついたり、ごまかしをしたり、無意識に人を傷つけたり……何かしらの罪を人間は犯している。そんなあなたに人を裁く権利がありますかと、イエスが説くそのシーンに私は心打たれた。とは言え、私も愚かな人間のひとりである。自分のことは棚に上げて他人を責めることがなくはない。そんな時に、その言葉を思い出して心をクールダウンさせるように努めているつもりではあるが……。
映画『キング・オブ・キングス』は、イエス・キリストの生涯をイギリスの作家ディケンズが我が子に語るというストーリー。聖書に馴染みのない多くの日本人にもわかりやすく学べるイエスの物語である。

©2025 MOFAC Animation Studios LLC.

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イギリスの人気作家チャールズ・ディケンズは、劇場に集まった観客を前に「クリスマス・キャロル」の朗読劇を披露していた。5 歳の末息子ウォルターは舞台裏で〝アーサー王ごっこ〟をしているうちに父の劇を邪魔してしまい、舞台はめちゃくちゃに……。妻キャサリンは親子の絆をこじらせた二人の関係を元通りにするため、夫が子どもたちのために書いていた「王の王」をウォルターに聞かせるよう提案する。アーサー王物語の源流ともいえるイエス・キリストの生涯に興味を持ったウォルターは、父が語る壮大な物語の世界に引き込まれ、大切なことを学んでいく──

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監督・脚本:チャン・ソンホ
声の出演:ケネス・ブラナー ユマ・サーマン ローマン・グリフィン・デイヴィス オスカー・アイザック ほか
2025年/韓国・アメリカ/英語/101分/配給:ハーク
https://hark3.com/king/
3月27日(金)全国ロードショー
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