金曜の夜9時からおおくりしている最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週は『午前4時にパリの夜は明ける』(4月21日公開)と『せかいのおきく』(4月28日公開)をご紹介しました。
まずは、深夜ラジオがつなぐ愛おしく大切な 7 年間の物語、『午前4時にパリの夜は明ける』から。
【STORY】
1980年代のパリ。結婚生活が終わりを迎え、ひとりで子供たちを養うことになったエリザベート。
生きていくために深夜放送のラジオ番組の仕事に就き、番組がきっかけでタルラという家出少女と出会う。
タルラを自宅へ招き入れたエリザベートは、ともに暮らすなかで自身の境遇を悲観していたこれまでを見つめ直していく~。
同時に、ティーンエイジャーの息子マチアスもまた、タルラの登場に心が揺らいで……。
【REVIEW】
他の女性と暮らすことになった夫との別れ、新たな出会い、子供たちの成長――。
エリザベートに訪れる様々な変化を、希望と変革のムード溢れる80年代のパリとともに優しく描いた物語。
主人公のエリザベートは、結婚してすぐ家庭に入ったためか、とても繊細で世間知らず。
何かにつけめそめそ泣いているイメージなのだが、ラジオ番組の電話受付として働き始めてからは、不安や戸惑いを覚えながらも前へと進んでいくようになる。
そしてラジオ以外に、図書館でも働くようにもなり、そこでの出会いから新たな人生が開けていく。
平凡な出来事の積み重ねが人生を彩ってくれることに気づき、人生なんだかんだあっても捨てたもんじゃない~と思える作品。
“「夜の乗客」の皆さん、今夜も朝 4 時までヴァンダがお供します~”という声で始まる深夜のラジオ放送。
ミカエル・アース監督の幼少期、実際に放送されていた「夜の出来事」という番組がモデルだそう。
80年代、テレビの深夜番組の台頭を横目に、ラジオの深夜放送は眠れない夜を過ごす人々を支え、人と人とをつなぐ架け橋だった。
劇中での番組にはヴァンダというベテランパーソナリティがいて、彼女の一方通行のお喋りだけではなく、リスナーとリアルタイムで対話するラジオの良さが伝わってくる。
そうそう、当時の人々がやたら煙草を吸っていたのが懐かしい。
女性も男性も、仕事場で、家で、道端で、歩きながら、みーんな煙草をくわえている!
ラジオパーソナリティのヴァンダも煙草の煙をくゆらせながらマイクに向かっている!
あの頃、煙草は大人の証であり、おしゃれな人のアクセサリーのひとつだった……そんな80年代が甦る!
ただ、ラジオでお喋りしている私個人としては、深夜のラジオ番組をもっともっと主軸においてほしかったかな~とは思う。
監督・脚本 :ミカエル・アース
出演:シャルロット・ゲンズブール キト・レイヨン=リシュテル ノエ・アビタ メーガン・ノータム エマニュエル・ベアール
2022 年/フランス/111 分/配給:ビターズ・エンド
https://bitters.co.jp/am4paris/
4月21日(金)~全国順次ロードショー
関西では、シネ・リーブル梅田 アップリンク京都 シネ・リーブル神戸