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【鳥飼美紀のとっておきシネマ】ノルウェー映画『センチメンタル・バリュー』

今週は、昨年の第78回カンヌ国際映画祭でグランプリ受賞し、本年度アカデミー賞フロントランナーとの呼び声も高い話題作『センチメンタル・バリュー』をご紹介します。テーマは、愛憎入り混じる「親子」という名のしがらみ。観終わると、父と娘、父とその母、娘たち姉妹……の複雑な絆が心に残ります。タイトルの「センチメンタル・バリュー」とは、愛着があるもの、思い出のあるもの……という意味だそうですね。

© 2025 MER FILM / EYE EYE PICTURES / LUMEN / MK PRODUCTIONS / ZENTROPA
ENTERTAINMENTS5 APS / ZENTROPA SWEDEN AB / KOMPLIZEN FILM / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ARTE
FRANCE CINÉMA / FILM I VÄST / OSLO FILM FUND / MEDIEFONDET ZEFYR / ZDF / ARTE

 シネマエッセイ 
そろそろ終活をしなければならない年頃になった。明日こそ始めようと思いつつ、数年が過ぎてしまっている。書籍やサザングッズ、ゴルフクラブやウェア、お稽古ごとの道具など、気の遠くなるような量の物がクローゼットや物置部屋に置かれている。そんな私でも、何度か衣替えのついでに洋服の整理だけはしてきた。毎回ゴミ袋に2袋ほどは処分しているのだが、中には処分しようと一度は袋に入れたものの、やはり思いきれず取り出して衣装ケースに戻したものも何点かある。その一つに、40年以上前から持っているセーターがある。チャコールグレーとモスグリーンにオフホワイトというシックな色合いで編まれた丸ヨークセーター。これは、生前の父が私に買ってくれたものである。それが1982年だったのか83年だったのかは定かではないが、プロ野球の西武ライオンズが日本一になり、高槻の西武百貨店での優勝セールで買ってくれたセーターだ。父は84年に急逝したが、40年以上経った今でも、そのセーターに毛玉やほつれはなく新品のような佇まいである。もう少しくたびれていてくれたら処分する決心がついたのかもしれない……いや、逆だ。父が遺してくれた思い出の品だから、劣化を恐れて、父が他界してから私はこのセーターを着なくなったのだった。毎年、秋の衣替えで衣装ケースから取り出し、一度も袖を通さず冬を越し、春の衣替えで再びしまう……それを繰り返してきた40年だった。私はこれから先も、きっと処分できないに違いない。そのヨークセーターこそ、私のセンチメンタル・バリュー(愛着のあるもの)なのだから……。

映画『センチメンタル・バリュー』は、父と娘の物語のようで、父とその母の物語でもあり、また姉妹の物語でもある。そして、この家族にとって色々なことが起こっても、それを静かに見守っている『家』が、最初から最後までまるでその場所で呼吸をしているかのように存在している。もしかしたら、彼らにとってのセンチメンタル・バリュー(愛着のある、思い出のあるもの)は、ずっと見守ってくれた『家』なのかもしれない。これは家族と家の物語でもあるのだ。

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 ストーリー 
オスロで俳優として活躍するノーラと、家庭を選び息子と穏やかに暮らす妹アグネス。そこへ幼い頃に家族を捨てて以来、長らく音信不通だった映画監督の父・グスタヴが現れる。自身15年ぶりの復帰作となる新作映画の主演を娘に依頼するためだった。怒りと失望をいまだ抱えるノーラは、その申し出をきっぱりと拒絶する。ほどなくして、代役にはアメリカの人気若手スター、レイチェルが抜擢。さらに撮影場所がかつて家族で暮らしていた思い出の実家であることを知り、ノーラの心に再び抑えきれない感情が芽生えていく──。

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監督:ヨアキム・トリアー
出演:レナーテ・レインスヴェ、ステラン・スカルスガルド、インガ・イブスドッテル・リッレオース、エル・ファニング
2025年/ノルウェー/133分
配給:NOROSHI ギャガ
英題: 2025年/ノルウェー/カラー/ビスタ/5.1ch/133分
https://gaga.ne.jp/sentvalue_NOROSHI/
2月20日(金)全国公開


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