今週のとっておきの1本は、アイドルグループ・SUPER EIGHT の安田章大さんが企画した『平行と垂直』という作品。自閉スペクトラム症の兄と、結婚を控えた妹が人生の節目に自分たちの“これから”を見つめ直す物語。舞台は大阪・堺。兄を演じる安田さんと同じく、兵庫県出身の妹役ののんさんのテンポの良いユーモラスな関西弁に親近感が湧きます。

©2026「平行と垂直」製作委員会
シネマエッセイ
屋外で元気に遊ぶ子どもではなかった私は、あの遊びの名称を知らなかった。じゃんけんで勝った人が階段を上がっていく。上がっていく歩数は勝った手(?)によって変わる。グーで勝てば「グリコ」で3歩、パーなら「パイナップル」で6歩、チョキなら「チョコレート」で6歩という具合で、先にゴールに到着した人が勝ちとなる。ネットで検索してみると『じゃんけんグリコ』というらしい。屋内派の私とて、その遊びは何度も楽しんだ記憶がある。学校からの帰り道に少し長めの階段があれば誰からともなく始めたし、階段がなければ平たい道を歩数だけ進む形でやったこともある。その場合のゴールは、次の電信柱とか、あの本屋さんまでとか……。今思えば、たまたまじゃんけんでの勝ちが多かった……という運で早くゴールするだけのことの何が面白かったのかわからないが、子どもの遊びなんてそんなものかもしれない。
映画『平行と垂直』の中で、自閉スペクトラム症の兄と共に育った妹のふたりが「じゃんけんグリコ」をするシーンが何度かある。妹のじゃんけんのテンポについていけない兄は、いつも後出しで妹と同じ手を出しアイコになってしまう。なかなか勝負がつかないのだが、結局は妹の方が高いところに立っている。ちょっと切ないシーン。しかし、物語のラストになって、家族としてのふたりの立場は上でも下でも勝ちでも負けでもなく、アイコなのだと妹は悟る。どんなハンディキャップを持って生まれても、一生懸命に生きている人は強く美しい。さて自分は、その強く美しい人を偏見なく見つめられる人間になっているのだろうか。

©2026「平行と垂直」製作委員会
ストーリー
清掃の仕事に就き、周囲のサポートを受けながら自立した生活を送る大貴。カウンセラーとして働きつつ、兄を支えることを当たり前としてきた希。変わらないと思っていた日常は、希の結婚話をきっかけに静かに揺れ始める。支えてきたつもりの妹、支えられていると思っていた兄。ふたりは初めて、お互いの存在がどれほど自分を形づくってきたのかに気づいていく。

©2026「平行と垂直」製作委員会

©2026「平行と垂直」製作委員会
監督:小林聖太郎
原案・脚本:山野海
出演:安田章大 のん 伊島空 高山トモヒロ 谷村美月 福田転球 芦川誠 早織 久保田磨希 河野咲良 髙田幸季 武藤凪 林英世 / 神野三鈴 菅原大吉
2026年製作/日本/118分
配給:東映ビデオ
https://www.toei-video.co.jp/heikoutosuichoku/
8月28日(金)全国公開
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