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【とっておきシネマ】日本映画『望み』

10月からの新番組『とっておきシネマ』の鳥飼美紀です。
土曜日の「サウンドブランチ」が終了し、コーナー名そのままに独り立ちしたシネマ情報番組です。

映画は色々なことを私たちに教えてくれます。
1本の映画で気付かされたり、慰められたり、元気づけられたり、さらには人生が変わることだってあるかもしれません。
映画を通して様々な人生を知り、自身のこれからの糧になるような何かを感じ取れたらいいな……
そんな気持ちで、1つ1つの作品をご紹介していきたいと思います。
毎週金曜日 夜9時からの『とっておきシネマ』、どうぞこれから末永くお付き合いくださいね。

さて、第1回となる10月2日(金)の『とっておきシネマ』は 雫井脩介さん原作の映画『望み』をご紹介しました!

©2020「望み」製作委員会

【あらすじ】
1級建築士の父、編集の仕事を持つ母、高校生の兄、中学生の妹。
石川家は誰もがうらやむ幸せな生活をしていた。
ところが、高校生の息子の様子がおかしい。
彼はサッカーをしていたが、足を怪我してから目標がなくなり、親への態度も反抗的になっていた。
父親は「未来は変えられる。何もしなかったら、何もできない大人になるぞ」と正論で息子を諭す。
だが、息子の心にその言葉が響く様子はない。
ある日、前日から出かけた息子が夜になっても帰ってこない。
テレビのニュースでは、若い男性の遺体が車のトランクから見つかったという報道が流れる。
胸騒ぎがする父と母。
息子はその事件に関係しているのか。
息子は犯人なのか? あるいは、殺されているのか?

©2020「望み」製作委員会

真実を知りたいと願う両親の心の中には、それぞれの立場で正反対の「望み」が……。
「わが子が犯罪者であっても、生きていてほしい」
「たとえわが子が被害者となっていても、殺人を犯すような人間であってほしくない」
どちらにしても、身をえぐられるような結末が待っているのではないか……。

©2020「望み」製作委員会

【レビュー】
あなた、もしくはあなたの家族が殺人事件に巻き込まれたとする。
あなたは加害者、それとも被害者、どちらの立場を望むのか? 
たとえば加害者なら、残りの人生は「殺人犯」として、その罪を背負って生きていかなければならない。
仕事も地位もお金も失い、家族は世間から冷たい眼で見られる。
もし被害者なら、その先の人生そのものが「無」となり、生きていくことすらできない。
愛する息子が、殺人犯なのか被害者なのか? 
何も情報が入らない中で、この家族の「望み」は同じではなかった。
母は「殺人犯でもいいから生きていてほしい」と望み、父は「息子は殺人を犯すような人間ではない」ことを望む。
もし自分だったら、どちらを望むのか……観ている間、ずっと揺れ続ける自分がいたような気がする。
私たちは、事件が起こるとたいてい事件の経緯や犯人の人となりに注目しがちだ。
だが事件の周囲では、平穏に暮らす者には想像できないほどの「苦悩」がせめぎ合っていることを、この作品は教えてくれる。

©2020「望み」製作委員会

監督は、堤幸彦。
監督デビューは、1988年のオムニバス映画『バカヤロー』の「英語が何だ」という作品。
追い詰められた善良な人が、ラストに逆切れする痛快な展開で話題になった映画だ。
以後、ドラマ・映画・舞台と数多くの作品を手掛けヒットさせている。
独特の映像美を誇る『トリック』『スペック』シリーズ、また『明日の記憶』『悼む人』などの人間ドラマも描いてきた。
今回の『望み』では「俳優の演技1本でストレートに作品と向き合った」と語っている。
まさに登場人物の「心理」を巧い俳優たちが直球で演じているので、派手な作品ではないが見ごたえがある。

原作:雫井脩介
監督:堤幸彦
出演:堤真一・石田ゆり子・岡田健史・清原果耶ほか
2020年 日本 108分 配給:KADOKAWA
https://nozomi-movie.jp/
10月9日(金)~イオンシネマ三田WT、TOHOシネマズ西宮OS、TOHOシネマズ梅田などで公開されます。

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