毎週金曜日夜9時からの「とっておきシネマ」、鳥飼美紀です。
今週ご紹介した映画は、土屋太鳳さん主演のちょっと怖い『哀愁しんでれら』という作品です。
シンデレラストーリーに女性は憧れますが、さてシンデレラのその後はどうなったのかと、ふと思うことがありませんか?
それは考えない方がいいかもしれない……この作品を観ると、そう思うのではないでしょうか。
【STORY】
児童相談所で働く小春は、自転車店を営む父と妹と祖父との4人家族。
彼女が幼い時に、母が家を出ていくというトラウマを抱えながらも、平凡な毎日を過ごしていた。
しかしある夜、怒涛の不幸が重なり、一晩で彼女はすべてを失ってしまう。
呆然と夜道を歩く小春は、ふとしたことである男性の命の恩人となる。
あっという間に交際が始まり、彼のプロポーズを受け入れる小春。
なぜなら、その男性大悟は一人娘を男手ひとつで育てる開業医だったから。
優しく裕福な大悟は、小春にとってはまさに王子様だったのだ。
小春は不幸のどん底から一気に幸せの頂点へ駆け上がるシンデレラになった。
シンデレラの物語ならここで“めでたしめでたし”だが、小春の物語はそこで終わりではなかった……。
【REVIEW】
この作品は、2016年の「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM」でグランプリを獲得した渡部亮平監督のオリジナル脚本。
彼は「王子様と結婚したシンデレラのその後」と、「モンスターペアレンツ」をかけ合わせてこのストーリーを作った。
誰も予想できないラストを迎え、「シアワセって何?」という問いを観客に投げかける。
何よりも怖いのは、大悟が描いた家族の肖像画という設定の、この映画の予告チラシ。
小春、大悟、そして大悟の一人娘ヒカリという家族の肖像画なのだが、3人揃って「目」が描かれていない不気味なもの。
そして、彼女が真っ赤なウエディングドレスでバージンロードを歩くのも、ただ事ではない未来を予測させる。
土屋太鳳が演じる小春は真摯にシンデレラを生きているのに、そのままの幸せを許してくれない運命。
自分を捨てた母親のようにはなりたくない、良い母親になりたい、たとえ義理の仲でも……そう思い行動する小春を、誰も責めることはできない。
むしろそんなに頑張らなくてもいいんだよと言いたくなるが、追い詰められ変わっていく小春の心を私たち観客は傍観するしかないのだ。
ラストには、もはや彼女は何の躊躇も罪悪感もなく、“ある事”をやってしまう。
なぜなら、彼女にとってはそれが正しいことだから。
大悟の一人娘ヒカリ役でスクリーンデビューしたのは、8歳で63万人以上のフォロワーを持つファッションインスタグラマーのCOCO。
前半は少女の可愛らしさ、愛くるしさを、そして後半は得体の知れない残酷さ、凶暴さを全力で表現し、初めての演技とは思えない強烈な存在感を残している。
恐ろしいほどに・・・。
脚本・監督:渡部亮平
出演:土屋太鳳 田中圭 COCO 山田杏奈 ティーチャ 安藤輪子 金澤美穂 中村靖日 正名僕蔵 銀粉蝶 石橋凌
2021年 日本 114分 配給:クロックワークス
今日2月5日(金)から 梅田ブルク7 イオンシネマ三田WT 109シネマズHAT神戸、神戸国際松竹 TOHOシネマズ西宮OS などで公開
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