毎週金曜日夜9時からの「とっておきシネマ」、鳥飼美紀です。
もう3月も半ば……春らしくなってきました。
今年は桜の開花も早そうですね。
さて、今週ご紹介したのは1980年代のアメリカ南部を舞台に、韓国出身の移民一家の家族の絆と再生を描いた『ミナリ』という映画。
第36回サンダンス映画祭で、グランプリと観客賞をダブル受賞した注目の作品です。
【STORY】
1980年代のアメリカ。
農業で成功することを夢みる韓国系移民のジェイコブは、アーカンソー州の高原に家族と共に引っ越してくる。
雑草だらけの荒野に置かれたトレーラーハウスを自慢げに披露するジェイコブ。
二人の子どもの母として、病院のない土地への移住に戸惑う妻のモニカ。
この移住には最初から夫婦の間に大きな温度差があるようだ。
そして、韓国から呼び寄せた破天荒な祖母も加わり新生活がスタートする。
しかし、いわくつきの土地、水は干上がり、作物は売れず、契約のトラブルに見舞われ……
懸命に生きるジェイコブたちなのだが、次第に追い詰められていく。
【REVIEW】
米アーカンソーで生まれ育った韓国系アメリカ人のリー・アイザック・チョン監督による自伝的作品。
タイトルの「ミナリ」とは、韓国の芹(セリ)のことだそうだ。
たくましく大地に根を張り、2度目の旬が最も美味しいと言われていることから、子ども世代の幸せのために親が懸命に生きるという意味がこめられているとか。
同じアジア系である韓国移民の苦労話は、おそらく日本から移住した人々も同じように経験したことだろうと思う。
子どもに夢を叶える父親像を見せたいという思い、そして成功して子どもに幸せを与えたいという願いがあればこその決断。
コロナ禍の現在、日本国内でも都会から地方への移住を考える人が多いと聞くが、その環境や習慣の違いに戸惑うこともあるはず。
国内でさえ新しい土地での生活には不安があるのに、それが外国ともなれば苦労は計り知れない。
私も11歳の時に、四国の小さな村から家族で大阪に移住した経験がある。
当時、私の父親は「本屋の1軒もない村より、文化溢れる都会での暮らしを子ども達に……」と、移住を決断したという。
大人になってそんな事情を知り、父親の決断に私は心から感謝している。
それも小さな「ミナリ」物語だが、親というものは誰もがミナリ的な思いを持っているのではないだろうか。
果たして、ジェイコブの一家はアメリカで幸せをつかみ取ることができるのか。
逞しく生きる彼ら一家から、家族の絆の大切さや勇気をもらえそう……そんな作品である。
監督・脚本:リー・アイザック・チョン
出演:スティーヴン・ユァン ハン・イェリ アラン・キム ネイル・ケイト・チョー ユン・ヨジョン
2020年 アメリカ 115分 配給:ギャガ
https://gaga.ne.jp/minari/
3月19日(金)から、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズ西宮OS シネ・リーブル神戸などで公開
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