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【とっておきシネマ】日本映画『のさりの島』

毎週金曜日、夜9時からおおくりしている最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週は熊本県の天草が舞台となった『のさりの島』という日本映画をご紹介しました。
劇中で強烈なアクセントとなっているブルースハープのBGMにのせておおくりしましたが、天草の風を感じていただけたでしょうか?
「みつばちラジオ」という、天草に実際にあるコミュニティラジオ局が出てきます。
みつばち……ハニーと何だか親戚のようで親近感が湧きますし、清らという女性パーソナリティの天草愛にも好感が持てましたよ。

©北白川派

【STORY】
オレオレ詐欺の旅を続ける若い男が、熊本・天草の寂れた商店街に流れ着いた。
商店街で楽器店を営む老女の艶子は、その若い男を孫の“将太”として招きいれる。
若い男は、いつの間にか“将太”として艶子と奇妙な共同生活を送るようになり、居場所を見つけていく。
そしてもう一人、地元FM局のパーソナリティを務める清らという若い女性。
彼女は、賑わいのあった頃の天草の8ミリ映像や写真を集め、商店街の映画館での上映会を企画する。
ひょんなことから“将太”も、上映会の企画チームに参加することになり、彼は艶子の持っていた古いアルバムに一枚の写真を見つける。
上映会の日。ブルースハープの音色と共に、スクリーンには天草のかつての記憶が映し出される……。

©北白川派

【REVIEW】
原知佐子さんという女優を皆さんはご存知だろうか?
私の世代にとっては“テレビでよく見た名脇役女優”で、山口百恵さんの「赤いシリーズ」でのイビリ役が有名である。
この物語の中で、オレオレ詐欺をしようとした若い男を孫と思いこんで、一緒に生活する老女を演じている。
しっかりしているのか認知症なのか、その狭間を巧く匂わせる演技は、可愛いおばあちゃんの時もあれば、すっとぼけたり、意図的だったり。
観ている私も主人公の若い男と同じように、居心地のいい居場所を見つけた気になり一緒に暮らしたくなる。

©北白川派

そして、藤原季節という俳優の演技。彼は今年春の『くれなずめ』という作品にも出演している。
本作では、最後までどこの誰かわからない放浪する若い男(名前さえ明かされない)を自然に演じている。
癖のない演技の彼と原知佐子演じる老女との共同生活は、大きな事件や感動的なシーンがあるわけではない。
なのに………いや、だからこそいつまでも見ていたくなるのかもしれない。
残念ながら原知佐子さんは、昨年の1月、この作品の公開を待たずに亡くなってしまった。

©北白川派

タイトルの「のさり」というのは「良いことも悪いことも、天からの授かりもの」という天草の言葉である。
あらゆる困難を乗り越える力であり、違う考え方を認める力、そして全てのものに対する優しさの力……なのだそうだ。
すべてを受け止め、悪あがきせず、長い人生をおおらかに生きて行けたら……と思える素敵な映画である。

監督・脚本:山本起也
出演:藤原季節 原知佐子 杉原亜実 中田茉奈実 宮本伊織 西野光 ほか
2020年 日本 129分 配給:北白川派
https://www.nosarinoshima.com/

映画の舞台となった熊本ではすでに5月から上映されていますが、関西では京都シネマで6月11日(金)から公開です。
シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸は近日公開予定となっています。
各劇場の公式サイトで公開日や時間を確認の上、お出かけください。

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