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【とっておきシネマ】『白い牛のバラッド』(イラン・フランス製作)

毎週金曜日、夜9時からおおくりしている「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。

今週のとっておきの映画は、『白い牛のバラッド』という、第 71 回ベルリン国際映画祭⾦熊賞&観客賞にノミネートされた作品です。
ベタシュ・サナイハ、マリヤム・モガッダムの共同監督作品で、モガッダムは女優でもあり、この作品で主演も務めています。

【Story】
テヘランの⽜乳⼯場で働きながら⽿の聞こえない幼い娘ビタを育てるミナ。
彼女は、1年前に夫のババクを殺⼈罪で死刑に処せられたシングルマザー。
今なお喪失感に囚われているミナは、ある日裁判所から信じがたい事実を告げられる。
ババクが死刑となった殺⼈事件は、別の⼈物が真犯⼈だったというのだ。
賠償⾦が⽀払われると聞いても納得できないミナは、担当判事アミニへの謝罪を求めるが⾨前払いされてしまう。
理不尽な現実にあえぐミナに救いの⼿を差し伸べたのは、夫の旧友と称する中年男性レザだった。
ミナとビタ、レザの3⼈は家族のように親密な関係を育んでいくが、レザはある重⼤な秘密を抱えていた。
やがてその罪深き真実を知ったとき、ミナが下した決断とは……。

【Review】
主⼈公ミナを演じるのは、⼥優として⻑いキャリアを持つマリヤム・モガッダム。
彼女は共同監督も兼任して、⼥性差別的な法律や⾵習が残るイランの現状を描き出した。
夫が処刑され、一人で娘を育てるミナのもとに、夫の父親と弟が執拗に娘の親権を渡すよう迫ってくる。
親権をめぐる裁判になれば、母親に勝ち目はないというイラン社会。
また、夫の古い友人と名乗る男を一瞬部屋に入れただけで、それまで親切だったアパートの大家から「部屋を出てほしい」と言われる。
転居先を探そうにも未亡人で子供を持つ女性に貸してくれる部屋はほぼ皆無……。
そんなミナを通して、“⼥性の⽣きづらさ”というテーマも追求している。

物語のはじめと最後に、“刑務所の中庭にぽつんと⽴つ⽩い⽜”が写される。
イメージとしては、“死を宣告された無実の者”の隠喩(メタファー)である。
主人公のミナは牛乳工場で働いている。
そして物語の最も重要な場⾯でも温かいミルクが出てくる。
この牛というのはイスラム教のコーランから象徴的に用いられているという。
そして、映画の資料によると、イランは中国に次いで死刑執⾏件数が世界2位の国らしい。
わが日本でも死刑制度はあるので「冤罪」についての議論は真剣に考えていかなければならないが、私はこの作品を「サスペンス」として見た。
私がミナだったらラストシーンはどうなるだろう?
……答えはそう簡単に見つからない。

物語の前半に耳の聞こえない娘が、母親に「どうして眉をひそめているの?」と聞く。
そして後半では、亡き父親の友人と名乗るレザに「どうして顔をしかめているの」と聞くのだ。
それほどの哀しみを抱えた男女が関わりあい衝撃のラストを迎えるこの作品は、あなたにっとって忘れることのできない1本になるのではないだろうか?

監督:ベタシュ・サナイハ、マリヤム・モガッダム
出演:マリヤム・モガッダム、アリレザ・サニファル、プーリア・ラヒミサム
2020年 イラン・フランス 105分 配給:ロングライド
https://longride.jp/whitecow/
2月18日(金)~TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
関西では、大阪ステーションシティシネマ シネ・リーブル神戸 TOHOシネマズ西宮OSなどで上映。

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