毎週金曜日、夜9時からおおくりしている最新映画情報番組「とっておきシネマ」の鳥顔美紀です。
今週はイギリスの名優ケネス・ブラナー製作・監督・脚本の『ベルファスト』をご紹介しました。
ベルファストというのは北アイルランドの地名で、ケネス・ブラナーの生まれ故郷なのです。
ブラナーは1960年生まれ。この物語の時代背景は1969年。主人公の少年は9歳。まさに、ブラナー自身が投影された作品です。
彼はこの作品を「とてもパーソナル(個人的)な作品」と言っていますが、私はブラナーとこの作品が個人的に大好きです!
【STORY】
北アイルランド・ベルファストで生まれ育ったバディ。
家族と友達に囲まれ、映画や音楽を楽しみ、充実した毎日を過ごす9歳の少年。
たくさんの笑顔と愛に包まれる日常は彼にとって完璧な世界だった。
しかし、1969年8月15日、バディの穏やかな世界は突然の暴動により悪夢へと変わってしまう。
プロテスタントの武装集団が、街のカトリック住民への攻撃を始めたのだ。
住民すべてが顔なじみで、まるで一つの家族のようだったベルファストは、この日を境に分断されていく。
暴力と隣り合わせの日々のなか、バディと家族たちは故郷を離れるか否かの決断を迫られる――。
【REVIEW】
この作品で描かれる1960年代末は、いわゆる「北アイルランド紛争」に突入していった時代である。
アイルランドではカトリックとプロテスタントが反目し、98年の和平合意までに3600人近い死者が出たという。
北アイルランドのベルファスト出身のケネス・ブラナー(イギリスの俳優であり映画監督)が自身の幼少期を投影した自伝的作品。
9歳の少年バディの目線を通して、楽しく過ごしていた日常から一変、激動の時代に翻弄され様変わりしていく故郷ベルファストを、モノクロ映像でパワフルに描いている。
冒頭、ベルファストの街が、空から、陸から、鮮やかなカラーで映し出され、いつしかモノクロに変わり1969年のベルファストとなる。
子供たちがご機嫌に遊ぶ平和な街が、突然戦場のような荒んだ状態に様変わりする。
スクリーンの中だけではなく、観ている方も「何が起きたんだ?」と身を乗り出すほどの突然の出来事……。
主人公バディの家族は、ロンドンに出稼ぎに行っているパパと、すぐにカッとなるけれど愛情あふれるママ、そしてお兄ちゃん。
近所には、お爺ちゃんとお婆ちゃん、叔父さんたちも住んでいる。
バディの夢は世界一のサッカー選手になることと、クラスメートのキャサリンと結婚すること……。
一家はプロテスタントだが、そのプロテスタントの武装集団が街のカトリックの人たちへの攻撃を始めた。
ベルファストの街は分断され、暴力と隣り合わせの中で、パパとママは外国への移住を考え始める。
バディはお爺ちゃんたちともキャサリンとも別れたくない…でも街はどんどん危険になっていく。
このバディ少年が、すこぶる可愛い!
こんな可愛い子供たちを大人の紛争に巻き込んではいけない。
なのに、50年が過ぎた今も地球のどこかで子供たちが逃げ惑う争いが絶えないことに心が塞がれる。
とはいえ、この映画はブラナー曰く「パーソナルな作品」なのだ。
私も家族とともに故郷を離れ四国から大阪に移住してきたので、バディたち一家にとてもシンパシイを感じた。
同じように、映画を観たあなたがバディやその家族に共感してくれることを、ブラナー監督は願っているのではないだろうか。
製作・監督・脚本:ケネス・ブラナー
出演:カトリーナ・バルフ ジュディ・デンチ ジェイミー・ドーナン キアラン・ハインズ ジュード・ヒル
2021年/イギリス/98分/配給:パルコ ユニバーサル映画
https://belfast-movie.com/
3月18日(金)TOHOシネマズシャンテ TOHOシネマズ梅田にて先行公開
3月25日(金)~全国ロードショー 関西では、シネ・リーブル神戸、TOHOシネマズ西宮OSなど。