金曜の夜9時からおおくりしている最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週のとっておきの1本は、3月3日公開のアメリカ映画、スティーヴン・スピルバーグ監督の『フェイブルマンズ』。
世界で最も有名な監督のひとり、スピルバーグ監督はじめての“自伝的作品”です。
すでに、ゴールデングローブ賞のドラマ部門で作品賞&監督賞を受賞し、アカデミー賞®でも作品賞を含む7つの部門でノミネートされています。
3月12日(日本時間13日)に開催される授賞式での発表が楽しみですね。
【STORY】
1952年、初めて両親に連れられて観た映画に心奪われたサミー・フェイブルマン少年。
以来、8ミリカメラを手に家族の休暇や旅行の記録係となり、様々な映像をカメラに収め、編集までこなすようになる。
やがて、サミーは妹や友人たちが出演する作品を次々に制作し、「映画」という夢を追い求めていく。
母親はそんな彼の夢を支えてくれるが、父親はその夢を単なる趣味としか見なさない。
サミーはそんな両親の間で葛藤しながら、さまざまな人々との出会いを通じて成長していく。
【REVIEW】
サミー、すなわちスピルバーグ監督が少年から青年になるまでの物語で、家族との絆や葛藤、恋愛、映画への尽きない夢などがたっぷりと描かれている。
彼の家族はどんな人たちだったのか、彼はどのようにして映画に魅了されたのか……スピルバーグの原点を伝えてくれる物語。
科学者の父親バートとピアニストの母親ミッツイ、そしてサミーと3人の妹たちというフェイブルマン家。
はじめて観た映画に魅せられたサミーは、家族や友人を巻き込んで8ミリカメラで次々と映画を作っていく。
ときに周囲が驚くようなアイディアを盛り込んで映画を仕上げていくサミーだが、将来スピルバーグ監督になると思うと納得の少年時代である。
そんなサミーに、有能な科学者の父親は「映画は趣味に留めろ」というスタンスだが、才能あるピアニストの母親は応援してくれる。
ミシェル・ウィリアムズ演じるこの母親ミッツィが、情熱的で奔放、とにかく魅力的な女性なのだ!
キャンプをすれば焚火の周りで心のままに踊ったり、近所で竜巻が起これば車でそれを追いかけるような人。
また、紙のテーブルクロスに紙の皿での食事を終えると、全てをクシュクシュッとテーブルクロスに包んでゴミ箱へポイ、というチャーミングな女性でもある。
父親の仕事の関係で、家族はニュージャージーからアリゾナ、そしてカリフォルニアへと引っ越す。
環境が変わり、サミーは学校での人間関係や差別などで苦労を味わうが、さらに深刻な悩みを抱えることになる。
家族旅行の映像を編集したサミーは、その映像の中に母親の“ある秘密”を見つけ、混乱してしまうのだ。
そのことについてスピルバーグは「母を親として認識することをやめて、一人の人間として見るようになった」と語っている。
そんな様々なことを経験したからこそ、世界中の人々を感動させる作品を生み出すことが出来るのだろう。
サミーが子どもの趣味ではなくプロとして映画の世界に足を踏み入れるラストシーンは、「いよいよ、これからだ」とワクワクさせてくれる。
続編を望むのは野暮かもしれないが、映画監督としてのサミーの活躍や成長も見てみたい。
映画監督っていいな~自分の記憶をこんな素晴らしい映像作品として残すことができるのだから……と、監督の自伝的作品を観るといつもそう思う。
余談だが、あの『ツイン・ピークス』のデヴィット・リンチ監督が、ある人物に扮してあるシーンに出演している。
そんな遊び心のある演出も映画ファンにとってはたまらないところだろう。
イオンシネマ三田ウッディタウンでも上映されるので、ぜひ劇場で観ていただきたいオススメ作品。
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:ミシェル・ウィリアムズ、ポール・ダノ、セス・ローゲン、ガブリエル・ラベル、ジャド・ハーシュ、ジュリア・バターズ、キーリー・カースティン、ジーニー・バーリン 他
2022年/アメリカ/151分/配給:東宝東和
https://fabelmans-film.jp/
3月3日(金)~イオンシネマ三田WT 大阪ステーションシティシネマ TOHOシネマズ梅田 TOHOシネマズ西宮OS OSシネマズミント神戸などで公開