金曜の夜9時からおおくりしている、最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週は、韓国を舞台にした映画2本をご紹介しました。
どちらも、来週の8月25日(金)公開です。
まずは、『ソウルに帰る』(製作国:フランス・ドイツ・ベルギー・カンボジア・カタール)。
2022年・第43回ボストン映画批評家協会賞で作品賞に輝いた作品。
カンボジア系フランス人監督ダビ・シューが、友人の経験に着想を得て脚本を執筆し、メガホンをとりました。
ふとしたきっかけで、初めて生まれ故郷の韓国に帰ってきた女性が、異国の地で何年もかけて自分の原点を探し求め、人生を歩んでいく物語です。
【STORY】
韓国で生まれ、フランス人の養子となって育った25歳のフレディ。
彼女は、ふとしたきっかけから初めて韓国へ帰ることになった。
しかし自由奔放な彼女は、韓国の文化や言葉になじむことができない。
そんな中、フレディはフランス語が堪能な優しい韓国人テナの協力を得て、自分の実の両親を探しはじめる。
【REVIEW】
韓国・ソウルが舞台で、主人公はじめ登場人物のほぼすべてが韓国人だから、韓国映画かと思いきや……製作国はフランスなど、監督はカンボジア系フランス人である。
生まれて間もなくフランス人の養子となって韓国を出て、それなりに幸せに生きてきたフレディ。
韓国に来て、仲良くなった若者たちから「典型的な韓国人の顔」と言われるシーンがある。
また別のシーンでは彼女が「誕生日は好きではない」という趣旨のことを言ったりする。
自分のアイデンティティが明確でないことに、どうしようもない寄る辺なさを感じているのではないかと、観る者は想像する。
フレディは意志の強い女性に成長したようだが、後半あることで涙をポロポロこぼすシーンには胸を打たれる。
この物語は実の親を探し当てて終わりではなく、そこから先の8年にわたるドラマが描かれている
韓国の海外への養子縁組システムでは、双方の気持ちが合致すれば、会うことはさほど難しいことではないようだ。
しかし、どちらかが会いたがらなかったり、会ってからの関係性がどちらかの負担になったりと、それぞれの「心の問題」はやはり微妙だ。
誰もが想像する感動の結末ではないが、逆に悲痛な結果でもない。
実の親子が再会を果たした後の前向きなリアリティが、フランスの文化ゆえなのか……とも思う。
監督・脚本:ダヴィ・シュー
出演:パク・ジミン、オ・グァンロク、キム・ソニョン、グカ・ハン、ヨアン・ジマー、ルイ=ド・ドゥ・ランクザン
2022年/フランス、ドイツ、ベルギー、カンボジア、カタール/119分/配給:イーニッド フィルム
https://enidfilms.jp/returntoseoul
全国順次公開 関西では8月25日(金)~アップリンク京都、シネ・リーブル梅田、9月1日(金)~シネ・リーブル神戸などで公開。