金曜の夜9時からおおくりしている、最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週は韓国映画『人生は、美しい』をご紹介しました。
平凡な主婦が余命わずかと宣告され、夫とともに初恋の人に会いに行く旅を描いたロードムービー。
状況は深刻なのに笑えて、でもやっぱり泣かせる……紹介できる日が待ち遠しかったほど、素敵な作品です。
【STORY】
いつも不機嫌で亭主関白の夫・ジンボン、反抗期真っ盛りの生意気な娘、受験を前にまともに口をきこうとしない息子。
そんな家族と暮らす平凡な主婦・セヨンは、ある日、自分の余命が2か月足らずだと医師から宣告される。
〈死ぬ前やりたいこと〉を思い浮かべる彼女は、高校時代に出会った初恋の人に会いに行くという一大決心をする。
ジンボンに離婚を突きつけ、「離婚したくないなら、私の初恋の人を一緒に探して!」と強引に頼み込むセヨン。
妻の最初で最後の反乱に渋々同意するジンボンだったが、いざ車で出発しようとするも、セヨンは初恋の人の名前しか知らないのだった。
手がかりなしの旅は、とりあえずセヨンと初恋の人が出会った高校がある木浦(もっぽ)を目指してスタートする……。
余命宣告された妻とその夫が、妻の初恋の人を探すという珍しい設定のロードムービーでありながら、ミュージカル映画でもある。
作品を彩る音楽の数々は、韓国中で愛され続けている1970~2010年代の名曲揃いで、そのすべてが大衆に親しまれている楽曲ばかりとか。
それらの曲とジンボンとセヨンという平凡な夫婦の旅を通じて、観客は忘れていた初恋や友情、家族の愛までを追体験するのだ。
亭主関白で、不愛想……こともあろうに妻が余命を打ち明けても、舌打ちして「死ぬまでに片づけておけ」と、家事にクレームをつける夫。
そんな最悪な態度の夫ジンボンに対する、妻セヨンの「あなたと暮らした私が可哀想でならない」という言葉には、いたく同情した。
しかし、夫がそんな冷たい言葉を放ったのは、余命宣告を聞かされ、きっと妻以上にパニックに陥ってたのではないか……とも思う。
さて、初恋の人には会えるのか? 夫婦の旅は木浦から、釜山、そしてさらに清州から、小さな島の甫吉島へと続いていく。
ショックな現実に、その上をいくショックな事実も明らかになるが、それを笑い飛ばす夫がなぜか憎めない。
それでも、ラストにはやはり胸がいっぱいになる人生賛歌であることは間違いない。
この秋、「とっておきシネマ」イチオシの作品。
監督:チェ・グッキ
出演:リュ・スンリョン ヨム・ジョンア パク・セワン オン・ソンウ
2022年/韓国/123分
配給:ツイン https://lifeisbeautiful-movie.com/
11月3日(金)公開 MOVIX京都 シネマート心斎橋 kino cinema 神戸国際