今週は、フランス国内で940万人を動員した話題作、“復讐劇の金字塔”と称される『モンテ・クリスト伯』をご紹介しましょう。原作は19世紀フランスの文豪アレクサンドル・デュマによる傑作小説。日本では「巌窟王」の名でも知られる不朽の名作です。3時間弱の中に人間ドラマ、ラブ・ロマンス、サスペンス&ミステリー、生死を賭けたアドベンチャーとアクションが凝縮されていて、さらにフランス映画ならではの甘美なエレガンスをまとった仕上がりは、見応えたっぷり。原作を読んだ人も、読んでいない人も是非ご覧あれ!

©2024 CHAPTER 2 – PATHE FILMS – M6 – Photographe Jérôme Prébois
 シネマエッセイ 
かつて小説を読んで徹夜をしたのはわずか1回のみだが、強烈に記憶に残っている作品がある。遠藤周作の『王妃マリー・アントワネット』(新潮文庫)だ。オーストリアとフランスの政治的同盟の為、フランス皇太子妃として迎えられた14歳のオーストリア皇女マリー・アントワネットの生涯。フランス革命を背景にして、アントワネットはフランス最後の王妃として断頭台に消える……。革命前に民衆が貧困にあえぐ中、「パンがなければお菓子を食べればいいのに」と言ったとは、非常に有名な逸話。何という世間知らず、何と贅沢な、何とお気楽な……と、彼女のイメージは後世の私たちの目にもあまり良くない。そんなことも含めて革命の火が燃え上がっていく流れがとても興味深い。そして革命勃発後、アントワネットたち国王一家がフランスを脱出しようとするシーンは特にスリル満点。ハラハラドキドキの連続で、途中で本を閉じることができず夜通し読みふけったのだ。30年以上前の徹夜読書だったが、その興奮は今も蘇る。結局は、もうすぐ国境という場所で身元がバレたアントワネットたちはパリに連れ戻され、のちに処刑される運命となるのだった。
さて、そのフランス革命後のすったもんだを収拾し皇帝の座についたのがナポレオンだが、そのナポレオン失脚の頃に映画『モンテ・クリスト伯』の物語は始まる。一言で表すと、自分を陥れ人生を台無しにした3人の男たちへの復讐を果たす物語である。しかし、一言では語り切れないほどの様々な要素が盛り込まれていて非常に面白い。ロマンス、嫉妬、いわれなき罪、投獄と脱獄、復讐やアクション……なのにエレガント。これもデュマの原作を読むと、きっと徹夜で読みふけってしまうのではないか。また、小説とは違う部分もあるというから比べてみるのも楽しい。ちょうど読書週間である。秋の夜長、フランス文学の不朽の名作であり“復讐劇の金字塔”とも言われるこの物語に、どっぷり浸ってみてはどうだろう?

©2024 CHAPTER 2 – PATHE FILMS – M6 – Photographe Jérôme Prébois

©2024 CHAPTER 2 – PATHE FILMS – M6 – Photographe Jérôme Prébois
将来を約束された若き航海士ダンテスは、ある策略によって、無実の罪で投獄され、次第に生きる気力を失っていく。絶望の中、脱獄を企てる老司祭との出会いにより、やがて希望を取り戻していった。司祭から学問と教養を授かり、さらにテンプル騎士団の隠し財宝の存在を打ち明けられる。囚われの身となって14年後・・・奇跡的に脱獄を果たしたダンテスは、莫大な財宝を手に入れ、謎に包まれた大富豪“モンテ・クリスト伯”としてパリ社交界に姿を現す。そして、自らの人生を奪った三人の男たちに巧妙に近づいていく──。

©2024 CHAPTER 2 – PATHE FILMS – M6 FILMS – FARGO FILMS

©2024 CHAPTER 2 – PATHE FILMS – M6 – Photographe Jérôme Prébois
監督・脚本:マチュー・デラポルト、アレクサンドル・ド・ラ・パトリエール
出演:ピエール・ニネ、アナイス・ドゥムースティエ、バスティアン・ブイヨン、ロラン・ラフィット、パトリック・ミル
2024年/178分/G/フランス/配給:ツイン
https://monte-cristo.jp/
11月7日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
【鳥飼美紀のとっておきシネマ】へのメッセージはこちらから!
 
 

