毎週金曜日、夜9時からおおくりしている最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
映画好きには関心度の高い世界3大映画祭のひとつ、第75回カンヌ国際映画祭が5月28日に閉幕し、各賞の授賞式が行われましたね。
最高賞のパルムドールは、スウェーデンのリューベン・オストルンド監督『トライアングル・オブ・サッドネス』という風刺コメディが受賞しました。
日本関連では、是枝裕和監督の韓国映画『ベイビー・ブローカー』主演の韓国人俳優ソン・ガンホさんが男優賞を受賞。
作品自体が受賞を逃したのと、是枝監督作品でありながら日本映画ではない……というのが残念でしたね。
しかし、カメラドール(新人監督賞)の次点となる特別表彰を、日本の早川千絵監督『PLAN 75』が受けました!
ちょうどこの作品の試写を観た直後のカンヌ発表だったので、今週は急遽、この『PLAN 75』も追加してご紹介しました。
まずは、6月3日から公開のイギリス映画『君を想い、バスに乗る』をご紹介。
【STORY】
スコットランド最北端の村ジョンオグローツ。
最愛の妻を亡くしたばかりのトム・ハーパー、90歳。
彼は、ローカルバスのフリーパスを利用してイギリス縦断の壮大な旅に出ることを決意する。
目指すは愛する妻と出会い、二人の人生が始まった場所―イングランドの最南端ランズエンド。
行く先々で様々な人と出会い、トラブルに巻き込まれながらも、妻と交わしたある“約束”を胸に時間・年齢・運命に抗い旅を続けるトムは、まさに勇敢なヒーロー。
愛妻との思い出と自身の“過去”ばかりを見つめていたトムが、旅を通して見つけたものは……。
【REVIEW】
トムと妻のメアリーは、ある悲しみから逃れてイングランドの最南端(ランズエンド)からバスに乗り、スコットランドの最北端(ジョンオグローツ)にたどり着いた。
それから50年以上をその地で仲睦まじく暮らした2人だが、メアリーはトムを残してある日突然逝ってしまう。
独りになったトムは、亡き妻と交わしたある大切な約束を果たすため、ランズエンドへの人生最後の旅に出る。
その距離1300キロ、妻との思い出とともにバスを乗り継いで昔のルートを遡っていくトムの旅は、ハプニングやトラブルの連続。
しかも、旅の途中に彼と関わった人々によって、もう一つのドラマが紡がれていることをトムは知らない。
スコットランドからイングランドへと移り変わっていく風景は、観客も同じバスで旅をしている気分にしてくれる。
羊の群れやハイウェイ、都会のネオン、草原や海辺の景色、またトムの乗る路線バスの色も乗り継ぐごとに白から緑、青、黄色、赤などに変わって、ステキ可愛い!
ラストシーンは、足元のおぼつかない90歳の老人トムの歩みに合わせて、じっくり……じっくり見てもらいたい。
トムが妻と約束した「ちゃんと終わらせたいこと」を、ちゃんと見守ってほしい。
監督:ギリーズ・マッキノン
出演:ティモシー・スポール フィリス・ローガン
2021年/イギリス/86分/配給:HIGH BROW CINEMA
https://kimibus-movie.jp/
6月3日(金)~シネ・リーブル梅田 シネ・リーブル神戸 などで公開