毎週金曜日、夜9時からおおくりしている「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週は、ミス・ワールド大会で実際に起きた前代未聞の<大騒動>を描いた驚愕のエンターテイメント、『彼女たちの革命前夜』をご紹介しました。
【STORY】
1970年のロンドン。
学問をやり直すため大学に入学したサリーは、女性解放運動の活動家であるジョーという女性に出会う。
ジョーが所属する団体では、女性をモノのように品定めをする「ミス・ワールド」の開催を阻止するため、ある計画を練っていた。
一方、「ミス・ワールド」の主催者は開催に向けた準備を進めており、司会者にはアメリカのコメディアンであるボブ・ホープを起用し、世界各国からは出場者が続々と集結していた。
カリブ海の島国グレナダから参加したジェニファーは自身の夢を叶えるために出場をしたが、白人の出場者ばかりに注目が集まる状況に複雑な心境。
女性解放運動家、大会主催者、そして出場者、それぞれの想いが交差する中、ついに「ミス・ワールド」の当日を迎える……。
【REVIEW】
世界三大ミスコンテストの「ミス・ユニバース」「ミス・インターナショナル」そして「ミス・ワールド」とは、いわば美女のオリンピック。
見た目の美しさだけではなく、国際社会への貢献等を含めた才色兼備の女性たちが集結する大会だが、3つの大会の違いは主催国の違いだという。
ユニバースはアメリカ、インターナショナルは日本、そしてワールドがこの映画の舞台となるイギリスなのだそうだ。
私は少女時代、何も疑問に思うことなく、これらの大会をテレビで見ていた記憶がある。
美しくスタイルの良い、そして教養のある女性たちが世界中から集まって競い合う……羨ましいな~と単純に憧れていた。
しかし、“ミスコンは女性をモノ扱いしている!”と、女性解放運動の活動家たちが「ミス・ワールド」の会場に侵入するという前代未聞の大騒動が起きていたとは……。
映画は事実に基づいていて、主催者の立場、大会に出場する各代表の女性たちの思い、大会の妨害を計画する者たちの情熱が、それぞれに描かれる群像劇となっている。
当時、ミス・コンテストに応募するということは、女性が自分の人生を切り開くための数少ない手段のひとつだったのかもしれない。
印象に残るのは、黒人であるグラナダ代表のジェニファーの「女性解放のその手前、人種差別をまず乗り越えなければならない」という趣旨の言葉だ。
それは有色人種(である自分)が白人を抑えて世界の美のトップに立つことを指し、女性解放はその先だ~という切実な思いなのであろう。
騒動から半世紀を経た現在、ずいぶん女性の地位は上がったような気もするが、フィリッパ・ロウソープ監督のプロフィールには、“英国でただ一人英国アカデミー賞・監督賞を受賞している女性監督”とある。
まだまだ途上だということを、さりげなくほのめかしている。
エンドロールでは実在した登場人物たちのその後……が知らされるが、立場や考え方が違えど、彼女たちが前向きに歩んだことが想像できて嬉しくなる。
監督:フィリッパ・ロウソープ
出演:キーラ・ナイトレイ ググ・バサ=ロー ジェシー・バックリー グレッグ・キニア
2019年/イギリス/107分/ 提供:木下グループ 配給:キノシネマ
https://movie.kinocinema.jp/works/misbehaviour
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