金曜の夜9時からおおくりしている最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週は美食の国フランスで、初めてレストランを作った男の爽快な人間ドラマ『デリシュ!』という作品をご紹介しました。
【STORY】
1789年、革命直前のフランス。
誇り高い宮廷料理人のマンスロンは、自慢の創作料理「デリシュ」にジャガイモを使ったことが貴族たちの反感を買い、主人である傲慢な公爵に解任され、息子と共に実家に戻ることに。
もう料理はしないと決めたが、ある日彼の側で料理を学びたいという女性ルイーズが訪ねてくる。
はじめは不審がっていたマンスロンだったが、彼女の真っ直ぐな想いに触れるうちに料理への情熱を取り戻す。
ついにふたりは世界で初めて一般人のために開かれたレストランを営むことになる。
店はたちまち評判となり、やがて公爵にその存在を知られてしまうが…。
【REVIEW】
レストランというのは、もともとはフランス語だとか。
その原点は「店」を意味することではなく「元気を回復させる」というラテン語からとった料理(スープのようなもの)の名前だった。
外食店としての「レストラン」というのは、十八世紀終わりのフランス革命以後に生まれたスタイルらしい。
食事の楽しみというのは王侯貴族をはじめとする一部の富裕層だけの娯楽で、一般市民には外食をするという文化は存在していなかったのだ。
それがフランス革命によって、お城やお屋敷に仕えていた料理人たちが失業し、生きていくために彼らが街に店を開くことになる。
一般市民が食事を楽しめるレストランは、こうして誕生したのだ。
しかし、誰が、いつ、初めてのレストランを開いたのか……は諸説あるようで、当時を調べたべナール監督が歴史物語風に仕上げたのが本作である。
貴族のお屋敷で料理を作る主人公のマンスロンは、ちょっとしたことでお咎めを受けてお屋敷を追い出されてしまう。
お咎めを受けたちょっとしたこと……というのは、公爵主催の食事会に自らの創作料理を出し、しかもその料理にジャガイモを使っていたこと。
というのも、その頃は地中からの作物(ジャガイモやトリュフも!)は、悪魔の産物といわれていたらしいから、驚く。
公爵の理屈で言えば、大切な社交の場となっている食事会で恥をかかされたということなのか。
そんなこんなで一方的に解雇されたマンスロンだが、公爵への憎しみに打ち震えるというほどの復讐心は無い。
職を失って途方に暮れつつも未来志向に気持ちを切り替え、侯爵のためにではなく普通の人々のために料理を作る喜びを知る。
ラストは、少し小気味いい仕上がりの「大人のおとぎ話」のようである。
監督:エリック・ベナール
出演:グレゴリー・ガドゥボワ イザベル・カレ バンジャマン・ラベルネ
2020年/フランス・ベルギー/112分/配給:彩プロ
https://delicieux.ayapro.ne.jp/
9月2日(金)~大阪ステーションシティシネマ 京都シネマ TOHOシネマズ西宮OSなどで公開