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とっておきシネマ

【とっておきシネマ】韓国映画『ビニールハウス』

鳥飼美紀が金曜の夜9時からおおくりしている「とっておきシネマ」
今週は、韓国映画『ビニールハウス』をご紹介しました。
監督は、イ・ソルヒ監督。
この作品は彼女の初長編映画で、第27回釜山国際映画祭ではCGV賞、WATCHA賞、オーロラメディア賞を受賞し、新人監督としては異例の3冠を達成した作品です。

©2022 KOREAN FILM COUNCIL. ALL RIGHTS RESERVED

~鳥飼美紀のシネマエッセイ~
日本時間の3月11日(月)朝、第96回アカデミー賞の授賞式が開催された。
今回は日本映画が3作品ノミネートされていて、映画好きとしては少々テンションが高い。
その3作とは、国際長編映画賞に『PERFECT DAYS』、視覚効果賞に『ゴジラ-1.0』、そして長編アニメ賞に『君たちはどう生きるか』である。
すでにこの時点で日本映画の快挙と言えると思うけれど、結果は『ゴジラ-1.0』と『君たちはどう生きるか』が見事受賞し、連日の情報番組などを賑わせている。
特に私はゴジラのビジュアルに恋するおばさんなので、思わずガッツポーズ!
昨年の秋、イオンシネマ三田WTでこの作品を見た後、グッズ売り場でゴジラのフィギュアを買おうかどうしようか迷った末に買わなかったことが、改めて悔やまれる。

©2022 KOREAN FILM COUNCIL. ALL RIGHTS RESERVED

ところで、今回の日本映画だけではなく、近年はアジア映画が世界で高い評価を得ている。
特に韓国の、貧富の格差を背景にしたポン・ジュノ監督『パラサイト 半地下の家族』(2019年)はその代表で、カンヌではパルムドール、そしてアカデミー賞でも作品賞を受賞し、大きな話題となった。
そして、貧富の格差で言うなら半地下の上をいくかもしれないという、貧困や孤独、介護などの社会問題に根ざした映画『ビニールハウス』が、またしても韓国から発信された。

韓国では不動産価格の高騰や経済の低迷により、住宅を失った低所得者層や移民労働者が、掘っ立て小屋やビニールハウスに住まざるを得ないという社会問題が起こっているという。
韓国社会の闇を象徴するモチーフのひとつが、映画のタイトルにもなっているビニールハウスなのだが、一人でそこに住む主人公のムンジョンは訪問介護士兼家政婦。
さらに彼女はシングルマザーで、一人息子は人に知られたくない場所にいる。
もうそれだけで余裕のある人生ではないことがわかる。
ムンジョンは、息子が帰ってきたら普通のアパートを借りて一緒に住む……という夢のため、真面目に働いていたはずだった。
ところが、認知症患者の介護中に突発的な事故が起こり、急場凌ぎの“誤った選択”をしてしまう。
最初のボタンの掛け違いで、事態は救いようのない次元に陥っていくのだ。
ラストは、誰も想像だにしない展開となり、あぁ主人公はどうなってしまうのだろう……と絶望するのは観客のほうかもしれない。
この映画ではムンジョンだけでなく、彼女が訪問介護士として通う家の老夫婦や、メンタルセラピー仲間の女性など、それぞれが絶望に支配されていく様子も描かれる。

傍で見ていれば希望ある道の選択は容易であるのに、渦中に放り込まれると方向を見失ってしまう。
観客は自分の想像を超えた結末を目の当たりにし、破滅へと転がっていく人生について深く考えたくなってしまう物語である。

©2022 KOREAN FILM COUNCIL. ALL RIGHTS RESERVED

【ストーリー】
ビニールハウスに暮らすムンジョンの夢は、少年院にいる息子と再び一緒に暮らすこと。
引っ越し資金を稼ぐために盲目の老人テガンと、その妻で重い認知症を患うファオクの訪問介護士として働いている。
そんなある日、風呂場で突然暴れ出したファオクが、ムンジョンとの揉み合いの最中に床に後頭部を打ちつけ、そのまま息絶えてしまう。
ムンジョンは息子との未来を守るため、認知症の自分の母親を連れて来て、ファオクの身代わりに据える。
絶望の中で咄嗟に下したこの決断は、さらなる取り返しのつかない悲劇を招き寄せるのだった——。

©2022 KOREAN FILM COUNCIL. ALL RIGHTS RESERVED

監督・脚本・編集:イ・ソルヒ
出演:キム・ソヒョン、ヤン・ジェソン、シン・ヨンスク、ウォン・ミウォン、アン・ソヨ
2022 年/韓国/韓国語/100 分/カラー/2.39:1/5.1ch
原題:비닐하우스 字幕:大塚毅彦
配給:ミモザフィルムズ
© 2022 KOREAN FILM COUNCIL. ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト:https://mimosafilms.com/vinylhouse/
3月15日(金)より全国順次ロードショー
関西では、京都シネマ、シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸など

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