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【水谷幸志のジャズの肖像画よもやま話】10月3日(木)配信 テナー・サックス奏者 デクスター・ゴードン

毎月第1木曜日は「水谷幸志のジャズの肖像画よもやま話」を配信しています。ハニーFMのフリーペーパー「HONEY」vol.12〜32に掲載されていた水谷さんのコラム「水谷幸志のジャズの肖像画」では書ききれなかったエピソードや時代背景などをゆったりと振り返りながらお送りします(再生ボタン▶を押すと番組が始まります)

今回はテナー・サックス奏者 デクスター・ゴードンを紹介しました。

当時のコラムと合わせてお楽しみください。

「HONEY」vol.18


ロング・トール・デックス(LONG TALL DEX)ことデクスター・ゴードン。その名の通り2メートル近い長身の持ち主である。
紫煙をくゆらせるデックス。大きく開いた長い足をしっかりと踏みしめ、ノン・ビブラートでズシン~と重たいブローを此方の身体に見舞う。その仁王立ちの背中は、広くて大きくて…ジャズとは何かと語りかけてくる。そう、今では失われたおおらかなダンディズムが漂ってくるハード・ボイルドな男である。
その男、デクスター・ゴードンだが、医者の一人息子としてロサンゼルスに生まれる。ジャズファンでもある父の影響を受けて、早くからクラリネットやテナー・サックスを手にする。
17歳の時、ライオネル・ハンプトン楽団に入りプロの洗礼を受ける。その後、40年代後半のビバップ・シーンで、西海岸を中心にワーデル・グレイとのテナーバトルなど、ハードなプレイで人気を得るが、ご多分に漏れずドラックに嵌り50年代の殆どを棒に振ることになる。
60年代に入り、塀の中のロングバケーションを終えたデックスは、活動拠点をヨーロッパに移し、自ら第二の故郷と語ったコペンハーゲンにあるジャズクラブ「カフェ・モンマルトル」に腰を落ちつける。彼の息の長いキャリアの中でいぶし銀の輝きを見せるのは、初めての経験、映画『ラウンド・ミッドナイト』の主演を務めたこと。物語は50年代末のパリが舞台。「ニューヨークからパリへと都落ちした伝説のジャズメンがブルー・ノートに出演する」その老舗ジャズクラブのシーンから映画は始まる。伝説のテナー吹きを演ずるデックスの存在感!悠々と迫らず、ほとんど“地”のままの演技が86年のアカデミー主演男優賞にノミネートされる。単なるジャズ・ミュージシャンの枠に収まらないデクスター・ゴードンのアルバムはそれぞれが異彩を放っているが、夏の夜に聴きたい一枚と云えば、65年の「GETTIN’ AROUND」。その冒頭を飾る“黒いオルフェ / Manha de carnaval ”がお薦め。先ほど紹介した映画の中で「歌詞を忘れたからテナーが吹けない」と、〈在る高みに達した者のみが口にする事ができる〉セリフを呟いているが、ここでは「こんなにも美しい朝 / 果てしなく幸せははかない / 朝つゆの玉のように・・・」と哀愁に彩られた名曲を、一陣の乾いた風が“さぁ~っと”通り抜けていくように“ぶっきらぼう”に奏でる。少し、肩を怒らせ、彼が吹くのは、柔なボッサじゃなくて深い陰影に縁どられた硬派のジャズボッサ。でも、お茶目な彼は、おもわずニヤリとする“チャチャ”のリズムをしっかりと取り込んでいる。話しを少し戻すが、デックスはブルー・ノートに7枚のアルバムを遺している。その最後の吹き込みが先ほどの「GETTIN’ AROUND」。このお皿、63年の「OUR MAN IN PARIS」ほどに、話題に挙がる事もない。しかし、生まれ故郷の西海岸とそして家族との決別、ふたたびヨーロッパへと旅立つ彼の広い背中をそっと押した“はなむけ”の一枚…ロング・トール・デックスにとっても忘れ難い作品の筈だ。

【番組で紹介したアルバム】


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