今週のとっておきの1本は、ペルシャ語とフランス語が公用語となり、イラン文化が強く反映された架空のカナダ・ウィニペグを舞台にした『ユニバーサル・ランゲージ』。ちょっとズレた人々が織りなす、すれ違いのファンタジーです。第77回カンヌ国際映画祭監督週間 観客賞受賞作品です。ユニークな世界観で描かれ、ストレートにテーマが伝わるかどうか……だけれど、見終わったあとには何だか優しい気持ちになる作品。

© 2024 METAFILMS
【シネマエッセイ】
日常生活で眼鏡をかけるようになって3年になる。そろそろ眼鏡が顔の一部のようになってきた。思えば、私は若い頃から眼鏡に憧れていた。なぜなら、眼鏡の人は思慮深く利発そうに私には見えるからだ。私自身は軽佻浮薄な人間なので、眼鏡をかけることで落ち着いた大人に見えればいいな~とかねがね思っていた。が、選んだ眼鏡はブルーとブラウンのマーブル模様のフレームなので、少しふざけた感じに見えるようだ。作戦は失敗。故に、そろそろ知的な眼鏡を新調したいと思う今日この頃である。その眼鏡だけれど、今年の夏の異常な暑さが身に沁みる異変が起こっている。車で出かけるとき、もちろん車内はエアコンが効いていて快適な温度である。おそらく23度くらいの設定だろう。ところが、目的地に着き車外に出ると一瞬で眼鏡が真っ白にくもるのである。ドアを開けた途端、「バッ」という音でも鳴ったかのように、一瞬にして視界が真っ白になる。それほどに車外の温度が高いのだろう。眼鏡をかけ始めて3回目の夏になるが、この「眼鏡真っ白」変化は今年が初めての現象である。とにかく今年の夏の暑さは度を超している。
そんな酷暑に観ると、少しヒンヤリ感が味わえる(?)のがカナダ映画『ユニバーサル・ランゲージ』だ。冬のカナダが舞台になっていて、雪景色の場面が多い。事の発端となるお金(札)は氷の中に閉じ込められている。あぁ、ヒンヤリ……。その氷漬けのお札を何とか取り出して、クラスメートに眼鏡を買ってあげようと奔走する姉妹を中心に、ちょっとユニークな人ばかりが出てくる物語。監督自身が脚本を書き、自身と同名の役柄で出演もしている。普通の人の理解を超えた感性で描かれているのかと思いきや、ラストには全部が繋がる計算された構成で、私のように平凡な感性の人間でも楽しく観られた。出会えて嬉しい作品!

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舞台はペルシャ語とフランス語が公用語になった、“もしも”のカナダ・ウィニペグ。暴れまわる七面鳥にメガネを奪われたオミッドは、学校の先生に黒板の字を読めるようになるまで授業を受けさせないと理不尽に怒られてしまう。それに同情したネギンとナズゴルは凍った湖の中に大金を見つけ、そのお金で新しいメガネを買ってあげようと思いつく。2人はお金を取り出すために大人たちにアドバイスを求めるが、街に住んでいるのはみんなちょっとヘンテコな人たちでなかなか思うようにいかない。そこに、奇妙なツアーガイドのマスードや、仕事に嫌気が差して自暴自棄になったマシューまで絡んでくる。はたしてネギンとナズゴルは無事にオミッドにメガネを買ってあげられるのだろうか?

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監督・脚本:マシュー・ランキン
出演:ロジーナ・エスマエイリ、サバ・ヴェヘディウセフィ、ピローズ・ネマティ、マシ
ュー・ランキン
2024 年/カナダ/89分/配給:クロックワークス
https://klockworx.com/movies/universallanguage/
8月29日(金)全国ロードショー
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