今週のとっておきの1本は、お笑いコンビ・ジャルジャルの福徳秀介さん著の小説『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』を映画化した作品です。福徳さんの母校、関西大学が舞台です。在学中の方、卒業生の方、きっと懐かしい風景がたくさん出てくるので必見ですよ。そうでなくても、関西に住む私たちには親近感が湧きますね。恋愛映画とは無縁な私も、4人の若手俳優のキャスティングが気になって試写を観ました。すると、忘れていた“人を恋する心”を思い出し、何だか思いきり切なくなってしまいました。

©️2025:今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」製作委員会
~シネマエッセイ~
先日、所用で友人と心斎橋をチラッと歩いた。ウン十年前、私は心斎橋に大阪支社があるアパレル企業に勤めていた。当時の心斎橋はお洒落なお店がひしめき、老舗の食べ物屋さんも多かった。毎日のランチは、デパ地下のお惣菜の日もあったけれど、うどん、蕎麦、ピザ、和食、洋食など、よりどりみどり! 中でもお気に入りのひとつが「明治軒」のオムライスだった。なんと創業は昭和元年らしい。もう100年になるのだ。昔ながらのオムライスに串カツ3本が添えられているセットが本当に美味しくて、ミナミでランチとなるとすぐに頭に浮かぶ店だ。当時の職場から歩いて2分ほどの明治軒は4階建てのレトロなビルで、たいてい2階のテーブル席に案内される。若い頃はただ美味しいと食べていたが、ホームページを見てみると、牛肉ミンチと玉ねぎなどの具材がペースト状になっているそうで、特製ペースト・特製ソースが混ざるワイン色のご飯を卵で巻いたのが、明治軒のオムライス。書いているうちに無性に食べたくなってきた。先日は、こちらも老舗の「浪速そば」で湯葉入りのお蕎麦を食べたのだが、もう一つ南の通りにある明治軒にも未練が……次回は絶対にオムライスにしようと思う。
さて、映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』にもオムライスのエピソードが出てくる。大学生の小西と桜田が初めて入った店は「オムライス」以外のメニューは独特のネーミングで書かれている。オムライスを上手く作れない店主が、オムライスを注文されないように他のメニューを個性的な名前にしていると後にわかる。確かにオムライスを作るのは難しい。私も人生で一度もオムライスらしいオムライスを作ったことがない。あの形が難しい。小西は桜田と会えなくなって、その店に一人で行きオムライスを注文する。さて……どんなオムライスが出てくるのか? それは劇場でのお楽しみだ。

©️2025:今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」製作委員会

©️2025:今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」製作委員会
大学生の小西は思い描いていた大学生活とはほど遠い、冴えない毎日を送っていた。ある日、お団子頭の桜田の凛々しい姿に目を奪われた小西は、思い切って声をかける。すると拍子抜けするほど偶然が重なり、二人は急速に意気投合する。「毎日楽しいって思いたい。今日の空が一番好き、って思いたい」と桜田が何気なく口にした言葉が小西の胸に刺さる。その言葉は、奇しくも半年前に亡くなった大好きな祖母の言葉と同じだった。小西が桜田との出会いを喜び、ようやく自分を取り巻く世界を少しだけ愛せそうになった矢先、運命を変える衝撃の出来事が二人を襲うー。

©️2025:今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」製作委員会

©️2025:今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」製作委員会
原作:福徳秀介『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(小学館刊)
監督・脚本:大九明子
出演:萩原利久 河合優実 伊東蒼 黒崎煌代 安齋肇 浅香航大 松本穂香/古田 新太
2024年製作/日本/127分/配給:日活
https://kyosora-movie.jp/
4月25日全国ロードショー
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