今週は、あのビートルズを世界に売り出し成功に導いたマネージャーを主人公にした『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』をご紹介しましょう。エプスタインがビートルズと出会い、共に歩んだわずか6年足らずの日々。そして、波乱と驚きに満ちたエプスタインの32年という短い生涯を描いた興味深い作品です。事前に試写が見られなかったので、公開後に映画館で観てきました。スクリーンでの映画観賞はやはり一味違いますね。ということで、現在上映中。興味のある方はお早めに!
シネマエッセイ
その日、地下鉄三宮駅に着いたのは11時27分。久しぶりの三宮。駅から映画館までは徒歩10分。お目当ての映画の上映開始時間は12時05分。それなら書店に寄れる……と、三宮センター街にあるJ書店に向かった。制限時間は15分か。おや? 書店が思っていた場所にない。数年ぶりなので閉店したのかと狼狽しGoogleMapで検索したら、1ブロック先だった。あ~良かった。私の記憶も曖昧になってきたようだ。あらかじめ買おうと決めていた愛読雑誌『文春CINEMA』と『クロワッサン』、そして桜木紫乃の新刊短編集『情熱』を手早く取ってレジに向かう。単行本にカバーをつけるかと聞かれ、一瞬考えて「お願いします」と答えた。あぁ、昔のカバーのほうが色も綺麗で紙質もしっかりしていたよなぁ……。しかも袋は有料。本はもちろん、カバーも袋もすべてが愛おしかったのに……。持参していたエコバッグに入れ、足早に書店を後にする。小さな信号を二つ渡って、確かこの辺りなのに映画館が見つからない。やはり私の記憶力は落ちている。またまたGoogleにお世話になる。すると何だ、振り返ればそこに「シネ・リーブル神戸」の控えめな文字が私の視線より下にあった。もっと大きく高く掲げて欲しいな~と独り言ちる。映画館は地下。このところ痛い膝のことを忘れてうっかり階段で降りる。しまった、しまった、シマクラチヨコ。心もち足を引き摺りながら、チケットカウンターへ。そうそう、シネリーブルはこの穴蔵感がたまらない。いかにも良質な映画をひっそりと観に来た感がある。シニア料金¥1,300なのかと少々驚く。上映まで10分足らず。持参した葡萄パンを大急ぎで食べよう。見渡すと、小さなカフェコーナーや、そのほかにもベンチやテーブルセットがあるので上映までの時間をくつろいで待つことができる。いかにも映画好きの雰囲気を纏った人たちが緩やかに行き交う。どちらかというと私のように1人で来ている人が多いようだ。大きな映画館も活気があって良いけれど、この落ち着いたスペースはまた違ったワクワク感を呼び起こしてくれる。さて、葡萄パンを食べ終わってスクリーン2に入ると、試写室くらいのスペースが半分ほど埋まっている。映画の好みが同じというささやかな親近感が湧くのは私だけだろうか。場内がゆっくり暗くなり、さぁさぁ始まるぞ。映画のタイトルは『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』だ。
イギリスのリヴァプール。ブライアン・エプスタインは、家業の家具店で日々忙しい毎日を送っていた。店舗に増設したレコード部門も2年後には看板部門に成長。ある日、リヴァプールのクラブ「キャヴァーン」で、まだ駆け出しの4人組ローカルバンド「ビートルズ」と出会う。4人が奏でる音楽に心を奪われ、バンドのメンバーたちにマネージメント契約を申し出る。有名レコード会社を回り、ついにEMI傘下のパーロフォンからデビューを遂げ、瞬く間に「ビートルズ」は世界中でその名を知らぬ者がいないほどの存在になっていく。しかしエプスタインには、マネージャーとしての表の顔からはうかがい知れぬ、一人の人間として満たされない思いがあった……。
監督:ジョー・スティーヴンソン
出演:ジェイコブ・フォーチュン=ロイド、エミリー・ワトソン、エディ・マーサン
2024/イギリス/112分/配給:ロングライド
https://longride.jp/lineup/brian/
9月26日(金) 全国公開中
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