今週は、スティーヴン・キング原作の『サンキュー、チャック』をご紹介しましょう。恐怖の先にこそ輝く、愛と希望を描く人間賛歌となっています。物語の中で不可思議な広告の人物として登場し、徐々にその数奇な生涯が明かされていくチャックことチャールズ・クランツ。チャックの人生の大切な思い出に“ダンス”があります。観る人の誰もが幸せを感じるようなエモーショナルなダンスシーンが見どころのひとつとなっています。

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シネマエッセイ
この歳(どんな歳?)になると、否応なく「死」というものを意識するようになる。死ぬのは怖いけれど、自分がいつどんなふうに死ぬのかは知りたい気もする。かつて山本夏彦というコラムニストがいた。私は確かアラフォーだったと思うが、彼の著書を読み漁った時期がある。なかでも『死ぬの大好き』という本のタイトルは今でも強烈に憶えている。細かい内容は忘れてしまったが、「自分は小さい頃から死ぬのを楽しみにしてきた」というようなことが書かれていたと思う。若かった私は「この人、強がっているな~」と感じた。みんな死ぬのは怖いと思っているはずで、楽しみだとか大好きだなんて虚勢だ……と。しかし、何故かそんな山本夏彦の思考に嵌ってしまった。『死ぬの大好き』をアマゾンで検索してみると、本の帯に「この本、中毒の恐れあり! 症状名―ナツヒコ・エッセイ・シンドローム」と書かれている。まさに私はその患者のひとりだったのである。当時、「死」はネガティブタなことと多くの人が思っていて、彼のようにあっけらかんと「早く死にたい」「死ぬの大好き」と言ったり書いたりする人はいなかった。今、この歳になって思う。あっけらかんと思う。「私は、いつどんなふうに死ぬのだろう?」と。非の打ちどころのない素晴らしい人生だったとは言えないけれど、喜怒哀楽それぞれ経験して、色々な人と出会い、やりたいことをやった。そんな私のまずまずの人生の最後はどんなふうに閉じられるのか興味津々、ある意味楽しみではある。さてさて、自宅の本棚を大捜索して『死ぬの大好き』を見つけたら、もう一度読んでみよう!
映画『サンキュー、チャック』でのラストシーンに、山本夏彦をふと思い出した。自分はいつどのように人生の幕を下ろすのか……それを恐れることはないのだ。幕が下りるまでを存分に生きればいいのだと、あらためて思う。映画の主人公チャックは、良き人生を生きた。未曽有の災害が頻発し、世界は終ってしまうのか、という冒頭のシーンからは想像できない後味の良い作品である。

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ついに世界は終わろうとしていた。人類による環境破壊のせいか、それともこの星の寿命なのか? 未曽有の自然災害が地球を襲い、ネット、SNS、電話などすべての通信手段がダウンしていったその時、街頭やTV、ラジオに突如現れたのは、「チャールズ・クランツに感謝します。素晴らしい39年間に、ありがとう、チャック」という謎の広告。カメラに向かって微笑む一見実直そうな男、チャックとは何者なのか、感謝の意味とは何なのか──その答えを知る者は誰もいない──。

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監督・脚本︓マイク・フラナガン
原作︓スティーヴン・キング
出演︓トム・ヒドルストン、キウェテル・イジョフォー、カレン・ギラン、ジェイコブ・トレンブレイ、マーク・ハミル
2024年製作/111分/G/アメリカ/配給:ギャガ、松竹
https://gaga.ne.jp/thankyou_chuck/
5月1日(金)全国公開
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