みなさま、おばんです。山形県出身の内藤美保がお送りする「こばえちゃ東北」。この番組では、東北各地の行きたい、食べたい、知りたいをお届けしています。「こばえちゃ」は山形県庄内地方の方言で「おいでください」という意味です(再生ボタン▶を押すと番組が始まります)

今週は岩手県一関市の厳美渓と猊鼻渓を紹介します。一関市には、名前がよく似た二つの名勝、「厳美渓」と「猊鼻渓」があります。どちらも岩手を代表する景勝地ですが、実は楽しみ方が大きく違います。今回はこの二つの渓谷を紹介します。

まずは、一関市について簡単に紹介しましょう。岩手県の南端に位置する一関市は、宮城県との県境に接し、世界遺産の町・平泉にも近い場所にあります。人口は約10万1500人。市内には豊かな田園風景や山々、清流が広がり、歴史や文化、自然を一度に楽しめる地域です。農業が盛んで、お米をはじめ、野菜や果物など、地域の自然を生かした農産物が生産されています。また、一関といえば、ぜひ知っておきたいのが「もち食文化」です。一関地方では、冠婚葬祭や季節の行事など、さまざまな場面でお餅を食べる習慣が受け継がれてきました。あんこ餅やずんだ餅、ごま餅など、味付けの種類も豊富。地域ならではの食文化として親しまれています。観光で訪れた際には、こうした郷土料理を味わってみるのも楽しみのひとつです。そして、一関市を訪れたらぜひ見ていただきたいのが、今回紹介する二つの渓谷です。

それでは、さきに「厳美渓」から紹介しましょう。厳美渓は、一関市を代表する景勝地のひとつで、国の名勝および天然記念物に指定されています。栗駒山を源とする磐井川の流れが、長い年月をかけて岩を削り、独特の渓谷をつくり上げました。見どころは、エメラルドグリーンに輝く水の色と、川の流れによって形づくられた珍しい岩や巨岩です。場所によっては、水が岩にぶつかって勢いよく流れ落ち、豪快な水しぶきを上げています。

一方で、深く水をたたえた静かな場所もあり、ひとつの渓谷の中でさまざまな表情を楽しめるのが特徴です。遊歩道を歩けば、目の前に迫る岩の迫力や、川の音、風の心地よさを身近に感じることができます。また、厳美渓を訪れたら外せない名物が「かっこうだんご」です。こちらは、いわゆる「空飛ぶだんご」として知られています。対岸にあるお店から、ロープにつるされた籠を使って、お団子とお茶が届けられるという、ちょっと珍しい販売方法です。東屋から籠にお金を入れ、木づちで合図をすると、籠がロープを伝って対岸へ。しばらくすると、お団子とお茶が入った籠が戻ってきます。目の前で籠が行き来する様子は、初めて見る方には楽しい体験になりそうですね。美しい渓谷を眺めたあとに、名物のお団子でひと休み。厳美渓では、自然の景色だけでなく、こうしたユニークな楽しみ方も待っています。

続いて、もうひとつの渓谷、「猊鼻渓」を紹介しましょう。猊鼻渓は、一関市東山町にある国の名勝で、日本百景のひとつにも数えられています。

砂鉄川の流れが石灰岩を浸食してできた渓谷で、両岸には高さ100mを超える断崖絶壁がそびえ立っています。この雄大な景色を楽しむ方法が、名物の舟下りです。舟は、船頭さんが一本の棹を使って巧みに操ります。エンジンの音に包まれるのではなく、川の流れや鳥のさえずりを感じながら、ゆっくりと渓谷の奥へ進んでいきます。舟から見上げる岩壁は、陸上から眺める景色とはまた違った迫力があります。目の前に迫る岩肌や、長い年月をかけてつくられた珍しい岩の数々。自然がつくり上げた壮大な景観を、川の上からじっくりと味わえるのが魅力です。

そして、猊鼻渓の舟下りをより印象深いものにしてくれるのが、船頭さんの唄う「げいび追分」です。舟が静かに進むなか、渓谷に響き渡る唄の声。岩壁に囲まれた空間に声が広がり、まるで自然そのものが音楽を奏でているような気分になります。美しい景色を眺めるだけでなく、耳でも渓谷を楽しめる。これが猊鼻渓ならではの魅力です。

舟下りは、折り返し地点まで進み、周辺を散策したあとに戻ってくる往復コースで、所要時間は約90分です。折り返し地点では、猊鼻渓の名前の由来にも関係する「獅子ケ鼻」と呼ばれる珍しい岩を見ることができます。また、ここで挑戦してみたいのが「運玉」です。対岸にある大きな岩には、願い事を込めた玉を投げ入れる穴があり、うまく入ると願いがかなうといわれています。運玉には「福」や「縁」、「恋」など、さまざまな願いにちなんだ種類があります。少し距離があるため、簡単には入りませんが、旅の思い出に挑戦してみるのもよさそうですね。さらに、猊鼻渓では季節によって景色が大きく変わります。春は新緑や藤の花、夏は緑に包まれた涼やかな渓谷、秋は岩壁を彩る紅葉、そして冬には雪景色が広がります。冬の名物は、こたつに入りながら舟下りを楽しめる「こたつ舟」です。温かいこたつでくつろぎながら、雪に覆われた岩壁や水墨画のような風景を眺める、冬ならではの楽しみ方です。季節によっては、舟の上で食事を楽しめる企画なども行われています。

このように、厳美渓は「歩いて楽しむ渓谷」、猊鼻渓は「舟に乗って楽しむ渓谷」。同じ一関市にあり、名前もよく似ていますが、体験できることはかなり違います。時間に余裕があれば、両方を訪ねてみるのもいいですね。
今回は、岩手県一関市の厳美渓と猊鼻渓を紹介しました。次回の「こばえちゃ東北」は、青森県深浦町北金ヶ沢にある大イチョウを紹介します。
次回もどうぞお楽しみに。したばの~
