毎週金曜日の夜9時からおおくりしている「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週ご紹介した映画は、『▶プレイ 25年分のラストシーン』というフランス映画です。
90年代から2010年代まで、25年にわたり撮り続けたホームビデオの映像を再生して……という、ユニークな設定の作品。
【STORY】
2018年.主人公のマックスは38歳。
ある日、彼はこれまで撮りためた個人的なビデオをひとつの作品に仕上げようと思い立ち、テープを整理し始める。
再生されたそのビデオは、13歳のマックスが両親からのクリスマスプレゼントに、ビデオカメラを贈られるシーンから始まっていた。
その日から彼は家族や幼なじみの友人たちと過ごす日々を撮り続け、いつしかそれは彼のライフワークとなっていく。
初恋の女の子エマを初めて意識した日……。
幼馴染の親友たちとのやんちゃな日々……。
仲間たちと行った旅行や、フランス・サッカーW杯でのお祭り騒ぎ、ミレニアムの興奮……。
そして、手痛い失恋や仲間の成功……。。
膨大な量のビデオには、いつも一緒だった仲間たちとの日々と、マックスのさえない人生すべてが記録されていた。
肝心なシーンで素直になれず、大切なものを手放してしまったと改めて気づいたマックス。
彼は、そのビデオに新たに加える“とっておきのラストシーン”を作ろうと準備を始めるのだった。
【REVIEW】
非常に面白かった!
見始めてしばらくは、これは本当に誰かのホームビデオの映像ではないのか……と思うほど、自然な演技と自然な画像。
ほとんどのシーンでマックスがカメラを持っているのだが、時々ほかの人にカメラを持ってもらったり、カメラを固定させたりして、マックス自身が映るのもとてもリアル。
そして、主人公マックスと同世代の現在40歳前後の人には、青春時代を彩った音楽などのカルチャーが盛り込まれているので、とても懐かしいと思う。
かなり上の世代の私でも、知らず知らずのうちに自分の青春を重ねてしまっていた。
どうしようもないほど素直じゃないマックスに、「まったく、男の子って!」と、呆れながら……。
監督は、アントニー・マルシアーノ。
1979年生まれのまだ40代初めの若い監督だ。
もしかしたら日本ではその名はあまり知られていないかもしれない。
この作品で主役のマックスを演じたマックス・ブーブリルとの共同脚本という作品が多いが、どれも日本未公開である。
この映画を作るきっかけとなったのは、携帯電話とインターネットのない時代に育った彼が「当時の自分をもう一回生きてみたい」と思ったからだとか。
そして、その唯一の方法が、架空のラッシュ(未編集)フィルムを作ることだったと語っている。
アイディアとしては冒険だったと思うが、結果としてはそのユニークな手法が功を奏した。
成功の理由の一つには、9ヶ月もの時間をかけたというキャスティングが挙げられるだろう。
13歳~15歳、16歳~20歳、そして大人になってから…の3つの時期ごとに俳優を探した。
その甲斐あって、1つの役を演じる各世代3人がみんなどことなく面影が似ているので、違和感なく時代が繋がっていったのだ。
この作品、「百聞は一見に如かず」ではないが、とにかく観て、その面白さとユニークさを実感してほしい!
国や背景そして人種は違えど、“青春ってみんなキラキラしている”と、あらためて感じてもらえたら嬉しい。
映画館から帰ったあなたは、思わず学生時代の仲間たちとの写真を捜して、心の中で思い出を再生(▶PLAY)しているかも……
監督:アントニー・マルシアーノ
出演:マックス・ブーブリル アリス・イザーズ マリック・ジディ アルチュール・ペリエ ノエミ・ルヴォウスキー アラン・シャバ
2018年 フランス 108分 配給:シンカ/アニモプロデュース
http://synca.jp/play/
11月13日(金)から、シネ・リーブル梅田 シネ・リーブル神戸で公開予定
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