毎週金曜日夜9時からおおくりしている最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週ご紹介した作品は、2019年にアルゼンチンで大ヒットした痛快リベンジ物語『明日に向かって笑え!』です。
あれ、どこかで聞いたようなタイトル?
そういえば、1969年に『明日に向かって撃て!』というアメリカの西部劇がありましたね。
内容は違えど、どちらも“明日に向かっている”のがいいですね。
【STORY】
2001年夏のアルゼンチン。
ブエノスアイレスから離れた田舎町。
元サッカー選手のフェルミンと妻のリディアは、小さなガソリンスタンドを経営している。
ふたりは、皆で資金を出し合って町はずれに放置されている穀物倉庫を買い取り、農業協同組合を作ろうと計画する。
目標額は倉庫の売値、25万ドル。
フェルミンの提案に、町民たちも自分たちの未来のために、なけなしのお金を出して出資する。
目標額には届かないが15万ドル集まった出資金を、フェルミンは銀行の貸金庫に保管。
残りは銀行からの融資をあてにしていた。
ところが、その出資金を銀行の支店長と弁護士のマンシーにだまし取られてしまう。
1年後、悪徳弁護士マンシーに関わるある情報がもたらされ、フェルミンたちは団結してリベンジを計画する。
さて、彼らは夢と出資金を取り戻せるのか~。
【REVIEW】
映画の原題「La Odisea de los Giles」…まぬけたちの一連の長い冒険。
「まぬけ」は言い過ぎだが、お人よしとかバカ正直ものという意味らしい。
この作品には、2001年のアルゼンチン金融危機と言う背景がある。
1990年代、アルゼンチンは自由開放経済政策を促進して高い成長率を達成。
しかし、次第に景気が低迷、2001年後半には金融危機や全般的な経済危機に陥る。
アルゼンチン政府は債務不履行を宣言し、ドル貯金を封鎖してしまう。
この映画の中のフェルミンたちの出資金は、このドル貯金封鎖の直前に貸金庫から口座に入れてしまったため、現金が引き出せないことに……。
すべてを予測していた弁護士と銀行支店長の罠にはまって、15万ドルは横取りされてしまうのだ。
あ~あ、ということで、ここまでは笑えたが、ここからは笑えない。
銀行でのすったもんだの末に、帰り道でフェルミンの身に取り返しのつかない悲劇が起る。
生きる気力を失ったフェルミン、そして出資をした仲間たちも地獄の日々……。
しかし、1年後驚きの情報がもたらされる!
そこで、彼らはリベンジを計画。
作戦のヒントに、フェルミンの妻リディアが大好きでいつも見ていたある有名な映画が出てくる。
はたして作戦は映画のようにうまくいくのか?
アルゼンチンを舞台にしたラテン式リベンジ、どうぞ楽しんでいただきたい。
私にはアルゼンチン版「忠臣蔵」に思えた。頑張れ~!
監督:セバスティアン・ボレンステイン
出演:リカルド・ダリン ルイス・ブランドーニ チノ・ダリン ベロニカ・ジナス
2019年 アルゼンチン 116分 配給:ギャガ
https://gaga.ne.jp/asuniwarae/
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