毎週金曜日、夜９時からおおくりしている最新シネマ情報番組、「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週は、『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』をご紹介しました。
描かれるのは、「何者か」になりたいと願う主人公が、自分のストーリーを生きるためにニューヨークで開く人生の1ページ。
それにしても、タイトルにある「ニューヨーク」ほど、夢を叶える場所として相応しい街は他にないですよね～。
9232-2437 Québec Inc – Parallel Films (Salinger) Dac © 2020 All rights reserved.
【STORY】
1990年代半ばのニューヨーク。
作家を夢見るジョアンナは、老舗出版エージェンシー でサリンジャー担当の女上司の編集アシスタントとして働き始める。
日々の仕事は、世界中から毎日大量に届くサリンジャーへの熱烈なファンレターを処理すること。
ファンレターの中には、小説の主人公に自分を重ねる10代の若者や、戦争体験を打ち明ける元軍人、作家志望の娘を亡くした母親など、心揺さぶられる手紙が…。
ジョアンナはそんな手紙を読むにつれ、愛想のない定型文の返事を送ることに気乗りしなくなり、ふとした思いつきで個人的に返事を送り始める。
そんなある日、上司のマーガレットの机の上の電話が鳴る。
たまたまジョアンナが電話を取った相手は、なんとサリンジャー！
それからのジョアンナは、偉大な作家の声を時々聞くうちに、自分自身を見つめ直すことになり……。
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【REVIEW】
原作は、ジョアンナ・ラコフの「サリンジャーと過ごした日々」（井上里・訳／柏書房）。
サリンジャー担当のベテランエージェントと新人アシスタントの、知られざる実話である。
出版エージェントとは、著者の代理人として出版社へ企画を持ち込んだり、著作物の権利管理を代行する人のこと。
ジョアンナが勤める出版エージェンシーは、1929年に設立された老舗である。
サリンジャーをはじめ、数々の文豪の作品の契約・著作権の管理などを行っている。
ジョアンナは作家志望という夢を隠して、このエージェンシーに採用され編集アシスタントとして働き始めるのだ。
劇中でジョアンナの上司となるシガニー・ウィーバーは、1988年の『ワーキングガール』でも主人公の上司役だった。
『ワーキングガール』では、それこそイケイケのワーキングガール（ウーマン）だったが、本作では人生の深みも加わり、彼女の演じる上司のドラマも描かれている。
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天才作家サリンジャーは、一般的に、「孤高の天才」、「偏屈」、「人嫌い」などのイメージが強い。
しかし原作では、作家志望の主人公ジョアンナの夢を後押ししてくれる人物として、好意的に描かれている。
ただし……ジョアンナは作家志望ではあるが、サリンジャーの小説は読んだことがない……（何ということ！）。
そんな彼女が、電話での声しか知らないサリンジャーに励まされて、自分の進むべき道を決めるのだ。
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ジョアンナを演じるマーガレット・クアリーのファッションにも注目したい（彼女はモデルでもある！）。
いつもきちっとしたファッションが老舗出版エージェンシーのオフィスにしっくり馴染んで、とても品が良い。
明るく感受性豊かで真面目な女子そのもののジョアンナを、観客はきっと応援したくなるにちがいない。
監督・脚本：フィリップ・ファラルドー
出演：マーガレット・クアリー シガニーウィーバー ダグラス・ブース ブライアン・F・オバーン
2020年／アイルランド・カナダ合作／101分／配給：ビターズ・エンド
https://bitters.co.jp/mynydiary/
今日５月６日（金）～全国ロードショー 関西では、テアトル梅田 シネ・リーブル神戸などで上映される。
