【とっておきシネマ】イギリス映画『シング・ア・ソング!~笑顔を咲かす歌声~』

毎週金曜日、夜9時からおおくりしている最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。

今週は、実話から生まれた感動の物語、『シング・ア・ソング!~笑顔を咲かす歌声~』をご紹介しました。
監督は、大ヒットコメディ『フル・モンティ』(97)でアカデミー賞®監督賞にノミネートされたピーター・カッタネオ監督。

© MILITARY WIVES CHOIR FILM LTD 2019

【STORY】
愛する人を戦地に送り出し、最悪の知らせが届くことを恐れながらイギリス軍基地に暮らす軍人の妻たち。
アフガニスタンの戦況悪化とイギリス軍からの増兵のニュースが流れる中、大佐の妻であるケイトは努めて明るくふるまっていた。
実はケイトは、愛する一人息子を戦地で亡くしていて、その喪失感を抱きながらも気丈に基地内の女性たちを元気づけているのだが、彼女の熱意は空回り気味。
一方、最近夫が昇進したリサは女性達の活動のまとめ役になるが、今は思春期の娘のことで手一杯でやる気が起こらない。
そんな中、クラブ活動的に始めた“合唱”に多くの女性達が笑顔を見せ始める。
やる気満々のケイトと、引き気味のリサは、意見の違いで衝突を繰り返す。
そして、集ったメンバーたちも、始めは心も歌声もバラバラなのだった。
しかし、心情を吐露するように共に歌い続けるうち、心が一つになり、次第に美しい歌声を響かせるようになる。
そんな合唱団のもとに、戦没者追悼イベントのステージへの招待状が届く。
思いがけない大舞台に浮足立つ妻たちだったが、そんな彼女たちの元に舞い込んだのは、恐れていた最悪の知らせだった……。

【REVIEW】
物語のモデルとなったのは、イギリスのキャタリック駐屯地に住む軍人の妻たちが2009年から始めた「合唱」。
その合唱団は、BBC の人気番組での特集、女王陛下の前での歌唱、オリジナル曲で全英チャート 1 位獲得など、国内で大きな話題になった。
現在、国内外にある 75 個の合唱団には、2,300 人以上の軍に関係する女性が所属している。
合唱団で歌うことで、愛する夫が長期間不在というストレスが緩和され、孤立・不安・抑うつ感の改善につながるという。

夫たちが基地から戦地へ向かう朝、送り出す妻たちの様子はそれぞれ違う。
何気ない日常の延長のように静かに送り出す妻、寂しさを紛らわすように憎まれ口をたたいてしまう妻、子供たちと帰りを待つ間の約束を決める妻……。
悪い知らせが届かないことを祈ることしかできない毎日が、また始まる……そんな朝を、彼女たちはもう何度も迎えているのが伝わってくるシーンが冒頭に描かれる。
基地はまるで一つの街のようだが、軍人である夫の階級がものをいうという、あきらかなヒエラルキーが匂う。
合唱団のリーダーは、大佐の妻でコンサバなケイトと、夫が昇進したばかりのカジュアルなリサの2人。
皆から少しばかり煙たがられているケイトは、讃美歌やクラシックを好み、「自分たちは、謙虚なヒナゲシであろう」と務める。
アクティブで強気なリサは、ロックやポップスを好み、「自分たちはヒマワリになろう」と考える。
何かと意見が食い違うケイトとリサだが、お互い理性的であろうと努力し、醜い戦いにはならないギリギリの攻防戦を繰り返す。
それが、ラストでついに凄まじい爆発を起こし、言ってはいけないことのオンパレードとなり、事態は最悪の状態になってしまうのだ。
果たして、戦没者追悼イベントという大きなステージで、彼女たちはどんなパフォーマンスを披露するのか。
妻たちのありのままの思いや願いが紡がれたオリジナルの歌詞、メロディ、その歌声を、どうぞ劇場でたっぷり味わっていただきたい。
今だからこそ、戦争で愛する人を失うことの恐怖や悲しみをリアルに感じ、音楽の力をあらためて実感できるのではないだろうか。

監督:ピーター・カッタネオ
出演:クリスティン・スコット・トーマス シャロン・ホーガン グレッグ・ワイズ ジェイソン・フレミングほか
2019年 / イギリス / 112分 / 配給:キノフィルムズ
https://singasong-movie.jp/
5月20日(金)からヒューマントラストシネマ渋谷・有楽町・グランドシネマサンシャイン池袋
他全国順次公開
関西では、アップルリンク京都 シネリーブル梅田 シネリーブル神戸など。

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