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【とっておきシネマ】アメリカ映画『スワンソング』

金曜の夜9時からおおくりしている最新シネマ情報番組「とっておきシネマ」の鳥飼美紀です。
今週は、アメリカ映画『スワンソング』をご紹介しました。
スワンソング(白鳥の歌)とは、白鳥は命が果てる際に最も美しい声で歌うと言われていることから、作曲家などの生涯最後の作品のことを〈スワンソング〉と呼ぶそうです。
つまり日本語の表現では「有終の美」ということになるのでしょうか。
この映画はアメリカ・オハイオ州の小さな町、サンダスキーに住むゲイの美容師、〈ミスター・パット〉ことパトリック・ピッツェンバーガー最後の仕事を描いた物語です。

© 2021 Swan Song Film LLC

【STORY】

ヘアメイクの現役生活を退き、老人ホームでひっそりと暮らすパットは、ある日思わぬ依頼を受ける。
かつての顧客で、街で一番の金持ちであるリタが、遺言に「パットに自分の死化粧をしてほしい」と遺したというのだ。
その依頼を聞いて、パットはすっかり忘れていた仕事への情熱、友人でもあるリタへの複雑な思い、そして自身の過去と現在……に心が揺れる。
ゲイとして生き、最愛のパートナーを早くにエイズで亡くしていたパットの脳裏に、さまざまな思い出が去来していく。
~人生の最後に、人は何を残すことができるのか~そんな疑問に突き動かされるように老人ホームを抜け出したパット。
彼は、町をさまよいながら多くの人と出会い、過去の自分と向き合うことで決意を固めていく。

© 2021 Swan Song Film LLC

【REVIEW】

主人公のパトリック・ピッツェンバーガー(ミスター・パット)は実在の人物である。
監督のトッド・スティーブンスは、17歳の時にサンダスキーのゲイクラブでミスター・パットが踊っている姿を見て衝撃を受けたという。
のちに映画の世界に入ったスティーブンスは、いつかミスター・パットを題材に映画を作りたいと願い、その思いを叶えたのがこの「スワンソング」なのだ。

© 2021 Swan Song Film LLC

監督自身もゲイであるということで、ゲイカップルの描き方には愛が満ちあふれているし、現実的に遺産相続の問題なども描かれている。
主人公のミスター・パット役は、ドイツ出身でハリウッド作品でも活躍する世界的名優ウド・キアー。
『悪魔のはらわた』や『サスペリア』などのホラー映画など多数に出演し怪優ぶりを発揮する、強烈な個性の俳優である。
そのウド・キアー演じるミスター・パットは、老人ホームではなかなかの隠れ問題児のおじいちゃん。
昔は町で人気のヘアメイクドレッサーだったパットは、パートナーに先立たれ、仕事も引退、現在は身寄りもなくホームで暮らしている。
毎日食堂から持ち帰っては丁寧に畳んだ紙ナプキンを、部屋のクローゼットに大量に隠し持っていたり、禁煙の規則を破って煙草をスパスパ吸ったり。
そんな日々を過ごしているところに、突然かつての顧客の葬儀で死化粧をしてほしいという依頼がくる。
一度は断ったものの、ミスター・パットは思うところあってホームから葬儀場所までの小さな旅に出る。
そして、変わってしまった町をさまよいながら、色々な場所で様々な人と出会うパット。
彼を全く知らない人もいれば、昔の仕事仲間に会ったりもする。

© 2021 Swan Song Film LLC

中でも私の一番のお気に入りのシーンは、あるブティックでパットがペパーミント・グリーンのスーツを試着して、店の女性と会話するシーンだ。
スウェットにウエストポーチだけでホームを出てきたパットが、このスーツを着た途端にとってもチャーミングに変身!
そして女性との会話も心に残る温かさがあり、最も印象深いシーンとして私の胸に焼き付いている。
LGBTを扱った作品だが、LGBTという呼ばれ方をしていない時代にゲイとして生き、人を愛したミスター・パット。
とても凛としていて、優しくて、かっこいい彼の人生ラストのパフォーマンスは、さてどんなことになるのか?

監督:トッド・スティーブンス
出演:ウド・キアー、ジェニファー・クーリッジ、マイケル・ユーリー、リンダ・エヴァンス
2021年 /アメリカ / 105分 / 配給:カルチュア・パブリッシャー
https://swansong-movie.jp/
8月26日(金)~シネ・リーブル梅田 シネ・リーブル神戸 アップリンク京都などで公開

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