今週のとっておきシネマ、2本目はフランス映画『彼女のいない部屋』。
【STORY】
この映画のアマルリック監督は「彼女に実際には何が起こったのか、まだ映画を観ていない人に明らかにしないでほしい」と言っている。
フランスの地方都市。彼女は車を走らせる。彼女は家族を捨てて家出をしたのだろうか。
海外資料にあるストーリーは「家出をした女性の物語、のようだ」という1行のみ。
フランス公開時にも物語の詳細は伏せられ、展開を知らない観客が、ある真実に気づいたとき、心が動揺するほど感動したという。
【REVIEW】
冒頭、テーブルの上にたくさんの写真を並べて、何かに苛立っている女性・クラリス(主人公)が描かれる。
写真はすべて彼女と彼女の家族との思い出の写真。
ふと彼女は決心したように部屋着から着替え、どこかへ行こうと車に乗り、家を出る。
家には夫と二人の子供たち(娘と息子)が寝ている……ようだ。
映画は、車を運転するクラリス、彼女のいない家で過ごす家族、海を見つめるクラリス、成長した子供たち……などを描く。
それぞれのシーンは、まるでバラまかれたパズルのピースのようにとりとめなく転がっているように思う。
すべてが現実でもなく、すべてが妄想や想像でもない。
そのうち観客はクラリスの身に何が起こっているのかを理解することになる。
「もしかしたら?」と思う瞬間が現われるのだ。
実はクラリスは、ある事実を……とても受け止め切れないある事実を待っていたのだった。
理解を超えた展開に最初は戸惑う。
だが、ストーリーを知った上でもう1度この映画を観るとすれば、彼女の痛いほどの悲しみに共感できるのではないか?
監督: マチュー・アマルリック
出演:ヴィッキー・クリープス(『ファントム・スレッド』『オールド』)、アリエ・ワルトアルテ(『Girl/ガール』)
2021年 フランス 97分 配給:ムヴィオラ
https://moviola.jp/kanojo/
9月2日(金)~シネ・リーブル梅田、京都シネマなどで公開中、9月9日(金)~シネ・リーブル神戸で公開